地元野菜がふんだんに使用された「シシリアンライス」

 ここ数年で「嬉野は勢いがありますね」と言っていただけることが増えた。それは単に一つの業界で一人のプレーヤーが頑張っているのではなく、さまざまな業種の勢いあるプレーヤーが複数人いるからだろう。旅館、窯業、農業、酪農、商店街、介護など自らの事業を次世代へ継承するべく切磋琢磨(せっさたくま)しているプレーヤーが多層となり、嬉野の未来をつないでいる。

 嬉野温泉駅前にUPLIFT(アップリフト)というお店がある。ここは2022年末にオープンしたセレクトショップと、嬉野の酪農家ナカシマファームが運営するカフェ「MILKBREW COFFEE」が共存する複合施設。農業を中心とした1次産業をコンセプトにしている。佐賀が誇る農業や酪農のポテンシャルを心地よく伝えてくれる場所だ。

 3月末には第2期工事が終わり、これまでになかったフードメニューが登場した。その中でも私が驚嘆し、すでにリピートしているのが「地元野菜とビーフのシシリアンライス~ウフマヨと水田のチーズのせ~」だ。約7種の野菜は生、ベイク、蒸し、ラペなど野菜に合わせた調理法をセレクトしながら組み合わされており、口の中で野菜の個性が重なり合って土の恵みを感じる逸品だ。チーズ、米、もち麦、野菜、たまご、のりなど野菜以外も全て地元生まれの素材で構成されている。

 初めて食べた瞬間に「これは野菜が苦手な子どもも野菜が好きになる」と確信し、野菜が苦手な次女に食べてもらった。結果、大成功で普段野菜を好んで食べない子がペロリと完食したそうだ。先日もまた食べたいと言い出し、連れて行った。店内外は地元の高校生や子どもたち、そして観光客でにぎわっていた。

 最終利益が市外に流出する大手デベロッパーの開発・運営ではなく、地元に根付く農業を中心に、地産地消と経済が回り始めた嬉野の駅前。そこに未来を担う子どもたちの愛着が加わり、さらなる循環を生んでいる。