【黄金世代・復刻版】遠藤保仁メモリアル ~ シドニー五輪秘話「進撃の裏側で」(前編)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年06月05日

忘れられがちなもうひとつの、“南豪の2週間”である。

2000年秋、シドニー五輪。中田英寿を中心に前進を続けたU-23日本代表にあって、ベンチにも入れない4選手のサイドストーリーがあった。(C)REUTERS/AFLO

画像を見る

【週刊サッカーダイジェスト 20001018日号にて掲載。以下、加筆・修正】

 メダル獲得へ邁進したシドニー五輪代表チームは、キャンベラ、ブリスベン、アデレードと戦いの場を移し、かけがえのない経験と苦渋を味わった。
 
 だがその裏側で、自問自答を続ける男たちがいた。
 
 ピッチで戦うことも、ベンチに入ることもなかったバックアップメンバー。そのひとり遠藤保仁が、自身の分岐点となった南豪での日々を、いま振り返る。

【PHOTO】遠藤保仁のキャリアを厳選フォトで振り返る
 
―――◆―――◆―――
 
 どこからか、記者の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
 
 眼前では、これから延長戦を迎えようかという日米両雄が円陣を組み、後方を振り返ると、日本の各プレスがこわばった表情で控え、いかなる結末を迎えるのか、緊張のままに構えている。
 
 アデレードのヒンドマーシュ・スタジアムでは、シドニーオリンピックの準決勝進出をかけた大一番が、いままさに始まろうとしていた。
 
 ふと、視線を下段のスタンドへずらすと、遠藤保仁と吉原宏太が、笑顔で手を振っている。傍らには曽ケ端準、山口智の姿もある。
 
 記者席とピッチを結ぶ長い距離、そのほぼ中間の位置で、彼らは戦況を見つめていた。それはどこか、現実から切り離され、和やかで穏やかな時間が流れるエアポケットのようだった。
 
 なぜ、この雰囲気のなかで笑っていられるのか。瞬間的には理解できなかったが、彼らの境遇をよくよく考えてみると、胸の奥底からこみ上げてくるものがあった。
 
 オーストラリアでの日々を高速回転で巻き戻すと、当然ながら、日本チームのあらゆるシーンに4人は登場した。
 
 1人ひとりの笑顔に触れ、いま一度、1つひとつをコマ送りで思い返してみる。
 
 彼ら4人はベンチに入ることを許されなかった者たち。だが紛れもなく、栄えある日本五輪代表のメンバーであり、誰と登録が代わってもおかしくない実力者たち。バックアップメンバー――栄光への進撃を続けたチームにあって、自己との葛藤を繰り返す選手たちがいた。
 
 これは忘れられがちなもうひとつの、“南豪の2週間”である。
【関連記事】
【黄金世代】第2回・遠藤保仁「152キャップの格別~すべては日の丸が教えてくれた」(♯4)
【黄金世代】第2回・遠藤保仁「コロコロPKの真実」(♯3)
【黄金世代・復刻版】「遠藤家の人びと」~名手ヤットのルーツを辿る(前編)
【黄金世代】第1回・小野伸二「なぜ私たちはこのファンタジスタに魅了されるのか」(♯1)
【黄金世代・復刻版】1999 U-20日本代表メモリアル「最強の名のもとに」前編
【黄金世代・復刻版】1999 ワールドユース激闘録~銀色の軌跡(前編)

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ