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大阪桐蔭だけじゃない!履正社は今夏に頂点をつかめるか

2019 8/7 06:00カワサキマサシ
履正社が初の甲子園優勝なるかⒸtak36lll/Shutterstock.com
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最多優勝回数を誇る大阪代表

「神奈川を制するものは、全国を制す」。高校野球に関する言葉である。野球マンガ「ドカベン」にも登場するフレーズなので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれない。「ドカベン」の主人公たちが所属する明訓高校は神奈川県にある設定なので、物語の中で主人公を際立たせるためのものであろう。それと同時に神奈川県は、今夏も予選参加校が全国一の愛知県の188校に次ぐ181校と、激戦区であることも事実だ。

しかし実際には2018年までの神奈川県の高校の夏優勝回数は、3位タイの通算7回。通算勝利数は126で5位。全国一の予選激戦区である愛知県も優勝は通算8回(うち5回は戦前)で2位、通算勝利数は130で4位にとどまる。

では、優勝回数全国1位はどこなのか。もうお察しであろう。そう、大阪府である。大阪府の優勝回数13は、愛知県を5回も上回る。通算勝利数は東京都の177に次ぐ172であるが、勝率は東京の.565に対して.662と1割も上回る。

通算勝利ランキングⒸSPAIA

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そのカラクリは、東京都は昭和49年の第56回大会より東西地区から各1校の出場となったこと。東京都から2校が出場するので、通算勝利数は伸びる。第80、90、100回の記念大会をのぞいては1校しか出場できない大阪が残しているこの数字は、別格である。

今夏の大阪を勝ち抜いたのは履正社。全国3位の予選参加174チームの頂点に立ち、8月7日の第1試合で霞ケ浦(茨城)と対戦する。

エース清水と4番井上はプロ注目選手

大阪の高校野球界は、それまで頂点に君臨し続けていたPL学園が2016年の夏を最後に活動休止したのは記憶に新しい。甲子園は2009年夏が最後で、以降は大阪桐蔭と履正社が2強を形成している。

しのぎを削る両校は、2010年以降の夏の大会に限れば大阪桐蔭が5回、履正社は今年を含めて3回出場。ただ、大阪桐蔭が3回の全国制覇を成し遂げているのに対し、履正社は3回戦進出が最高だ。山田哲人(現ヤクルト)を擁した2010年の第92回大会、寺島成輝(現ヤクルト)がエースだった2016年の第98回大会ともに3回戦の壁は突破できず、夏の甲子園での通算勝利数はわずか3勝にとどまっている。

最近10年の大阪代表ⒸSPAIA

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しかし、春は2014、2017年と2度の準優勝の実績がある。今春のセンバツでは、ドラフト1位候補と注目を集める星稜の奥川恭伸に17奪三振3安打完封と完全に押さえ込まれ、1回戦敗退に終わった。履正社ナインにはその雪辱を晴らす思いも、並々ならぬものがあるはずだ。

今年の打の主役は、規格外の飛距離を誇る4番の井上広大。大阪大会準々決勝で大阪桐蔭を破った金光大阪との決勝では、1点を追う展開から3試合連続の大会4本目となる高校通算46号ソロを放ち、それが呼び水となってその後に2本の本塁打が飛び出す一発攻勢。投げてはエースの清水大成が先発して6回1/3を無失点とゲームを作って、甲子園への切符をつかみ取った。今夏の甲子園でもプロが注目する投打の主役を軸に、悲願の頂点を目指す。

西岡剛「大阪代表はホンマにしんどい」

大阪の夏を勝ち抜き、さらに甲子園で勝ち上がるのがいかに大変か。筆者が阪神在籍時の西岡剛(現栃木ゴールデンブレーブス)に行ったインタビュー時に甲子園の話題になり、その際にしてくれた話を紹介しよう。西岡は2002年の第84回大会に出場し、初戦で敗れている。

「夏の大阪代表はホンマにしんどいんです。大阪予選はシードがないから甲子園に出るまで8回勝たんとアカンし、最後のほうはもっと気温が上がるのに日程が詰まってくる。大阪の決勝が終わったらすぐに甲子園で、身体を休める時間もない。大阪代表は甲子園に出るころは、もうフラフラなんですよ」

そんな環境下で、2009年から昨年までの10年間で3度の優勝を果たした大阪桐蔭が残した実績は称賛に値する。

過去のデータから、大阪の頂点に立った時点で全国トップクラスの実力を証明したと言っても過言ではない。履正社にとって今年の夏は、大阪の盟主の座を大阪桐蔭から奪うチャンスである。過酷な大阪予選を勝ち抜いた履正社が、日本の頂点に立てるか。今夏の甲子園の見どころのひとつだ。