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快投続く藤川球児 松坂世代「第1号」の名球会入りとなるか

2018 9/19 16:00青木スラッガー
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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未だ0人、引退相次ぐ「松坂世代」の名球会入りは?

ひとつの時代が、徐々に終わりへ近づいている。巨人・杉内俊哉、DeNA・後藤武敏が今シーズン限りでの引退を発表。独立リーグBC栃木の村田修一もすでに引退試合を終えた。

3人は一時期の野球界を席巻した松坂大輔と同学年にあたる、いわゆる「松坂世代」。杉内、村田、そして松坂をはじめ、プロ入り早くから活躍した世代だが、名球会入り区切りの数字「200勝」「250セーブ」「2000安打」に届いた選手は未だいない。このまま名球会入り0人で、松坂世代は球界を去っていくのだろうか。

引退が相次いだ一方で、松坂は見事な復活を果たした。9月13日阪神戦で今シーズン6勝目をマークし、日米通算170勝である。年齢を考えると残り30勝は決して簡単な数字ではないが、着実に金字塔へ向けて歩みを進めている。

復活した世代の主人公が唯一の名球会入りとなれば、これ以上のドラマはない。だが、数字上で名球会入りに松坂よりも近い位置の選手がいる。今も第一線で投げ続け、日米通算227セーブをマークする阪神・藤川球児だ。

日米通算227セーブ 復活を果たした藤川球児

メジャー最終年となった2015年、怪我の影響もあってシーズン途中に帰国した藤川は、阪神に戻ってきて見事な復活を遂げた。先発で開幕した2016年は43登板で防御率4.60だったが、昨シーズンは52登板で防御率2.22、今シーズンは48登板時点で防御率2.19と、年々成績は良化している。

アメリカでトミー・ジョン手術を受け、150キロ中盤をマークした「JFK」時代のようなスピードは出なくなり、追い込んだ後、捕手が中腰に構えるシーンも渡米前より少なくなった。それでも140キロ後半のストレートとフォークボールを低めに丁寧に集め、時折クイックモーションで投げタイミングをずらすなど、細かな技術を駆使して打者を打ち取っている。

特に今シーズンの働きは、リリーフ陣の柱と呼ぶにふさわしいものだ。防御率チームトップ、ホールド数(19)チーム2位、登板数(48)チーム3位。球界全体で見てもリリーフとして安定感はトップクラスだろう。

しかし、阪神復帰からの3年間で、藤川はセーブ数を5つしか積み上げることができていない。名球会入りへ難しい問題となるのは、藤川復帰と同時に就任した金本知憲監督の起用方法だ。

藤川は、「守護神」というかつての役割から長く遠ざかっている。どれだけ好投を重ねても、9回を任されセーブを挙げない限り、名球会入りへの道はない。では今の藤川は、クローザーを務めるにふさわしくない投手なのだろうか。

今シーズンは被打率が全盛期並みの数字に。「守護神」藤川の復活は?

藤川球児 阪神復帰後3シーズンの成績表

ⒸSPAIA

今シーズンの藤川は、昨年までの2シーズンと比べて投球スタイルに変化が起きている。奪三振率の高さは変わらないが、良くない面では、四球が増えた。一方で大幅に向上したのは被打率だ。現在.161で全盛期と変わらない数字を残している。

チームの守護神を務めるドリスや他球団のクローザー陣と比べても、藤川の被打率の低さは圧倒的だ。四球は多い部類だが、チームに勢いをつけるため「3人で片づけること」が求められるセットアッパーと違い、クローザーはリードを守って9回の1イニングを投げ切れば良い。走者を出してもヒットは許さず、結果安定した防御率を残していることを考えると、むしろ最もクローザーにふさわしい投球をしているという見方もできる。

今シーズンの主なクローザーの成績比較表(20セーブ以上対象)

ⒸSPAIA

ここまでセーブを重ねチームに貢献してきたドリスは、最近になって敗戦投手になる展開が続いている。CS争いをしている今、個人記録のためだけに配置を変えるのは正しい判断ではないだろう。しかし藤川が、今も守護神として活躍できるだけの力を持っていることは確かである。

今後セーブ数を積み上げ、松坂世代「第1号」の名球会入りとなるか、今後の藤川の投球に注目したい。