「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

三振が絵になる男・新井貴浩 「通算1700三振」到達間近、歴代5位金本超えも

2018 9/20 11:37青木スラッガー
通算三振数上位10選手,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

引退間近の新井が迫る「三振」の大台

フルスイングが信条の打者に「三振」は付き物だ。先日、今シーズン限りでの引退を発表し、残り少ない現役生活を過ごしているカープの大ベテラン・新井貴浩もフルスイングが代名詞の打者である。

引退を発表した9月5日の本拠地阪神戦、大歓声を浴びながら5回に代打で登場した新井は、10球粘った末、最後は高めの速球を空振り三振。これが1999年のプロ入りから、通算1690個目の三振だった。

広島復帰2年目の2016年に史上47人目の2000安打、史上42人目の300本塁打に到達。今シーズンは史上17人目の1300打点、史上10人目の80犠飛も達成した。球界を代表するスラッガーとして偉大な功績を示すこういった記録の数々だが、新井という打者を評価するためにもうひとつ忘れてはならないのが、「1700」に迫る三振の数である。

中村紀洋を抜いて歴代6位に浮上

新井は引退発表後に初めて先発出場した8日中日戦、代打出場の12日DeNA戦でも1つずつ三振を記録。この時点で通算1692三振となり、中村紀洋を抜いて通算三振数歴代6位に躍り出た。

三振が打席結果として、プラスのイメージで取り上げられることはほとんどない。しかし後から成績として振り返ると、三振の数は強打者の「勲章」になる。歴代トップの清原和博をはじめ、通算三振数上位は球史に名を残す長距離砲ばかりだ。

ツーストライクになったとき、三振を避けるために当てに行くのは簡単である。長打を望めない打者にはベンチもそういう打撃を求めるだろう。追い込まれてからでも思い切って振ることが許されるだけのパワーを持ち、長期間にわたって試合に出続けフルスイングを貫いた打者が、三振の数を高く積み重ねていくのだ。

通算三振数上位10選手,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

新井にとって三振は調子のバロメーター?三振が減った阪神時代

「三振数はフルスイングを貫いた証」という意味では、阪神時代の新井は広島で縁がなかった優勝争いや人気球団のプレッシャーからか、持ち味である「思い切りの良さ」を十分に発揮できなかったのかもしれない。

新井の通算三振率(三振数/打席数)は、通算三振数歴代トップ10人の中で5位となる19.3%だ。しかし所属球団別で三振率を求めると、復帰後を含めた広島時の20.8%に対し、阪神時代は16.9%。三振率順に各年成績を並び替えれば、第一次広島時代が上位にずらりと並ぶ。OPS(「出塁率+長打力」の指標)を見ると、その広島時代に高い数値を残したシーズンが多い。

広島に復帰してからも、1年目の2015年は新井にしては「優秀」な三振率15.2%を記録した。しかし復帰2年目からは三振率が19%台に上がるとともに、OPSも2年続けて.850台をマーク。2016年はセ・リーグMVPも獲得し、見事な復活を遂げて広島を連覇に導いた。

新井貴浩シーズン別三振率と打撃成績,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

兄貴分として慕う金本ら5人達成の通算「1700三振」へ

多くの打者にとって、三振率増加は打撃成績の下降に直結してしまうものだろう。大リーグでも全盛期は三振率一桁台が当たり前だったイチローもその傾向が顕著だった。だが、新井は違った。三振があってこその一流打者なのだ。

記録として次に迫るのは史上5人目の通算「1700三振」だ。そして、その先には新井が兄貴分として慕う金本知憲現が通算1703三振で歴代5位に位置している。三振を「期待」といっては失礼だが、通算1700三振到達となれば、この大台は誇るべきものである。最後の最後まで、新井には三振を恐れないフルスイングの打撃を期待したい。

※成績は2018年9月19日終了時点