丸佳浩は逃すも、ロッテには藤原恭大がいる
今シーズン5位に終わったロッテ。今オフはFA(フリーエージェント)最大の目玉と言われた丸佳浩の争奪戦に参戦するも、丸は巨人への移籍を表明。地元千葉県出身のスター選手の獲得は夢に終わった。
そんな失意に満ちたロッテファンが期待を寄せるのが、ドラフト1位の藤原恭大(大阪桐蔭高)だ。丸とは左の強打者、高卒でプロ入り、中堅手という共通点もあり、ファンからは「藤原がロッテの丸になるんだ」「丸を獲れなかったことも、2~3年後には忘れさせてくれるはず」といった声が寄せられている。
今夏の甲子園で、大阪桐蔭高の春夏連覇に主砲として貢献した藤原は、走攻守でレベルが高く将来的にはトリプルスリーも狙える逸材。50m5秒7と驚異的なスピードも持ち合わせ、自身の魅力を「足」と公言する。
12月4日に行われた新入団選手の会見では、「1年目から活躍して新人王をとりたい」と高い目標を掲げた。ロッテファンにとってはこれ以上にない頼もしい言葉だが、高卒1年目で活躍できるほどプロの世界は甘くない。
高卒1年目の壁は高い
確かに甲子園では輝かしい成績を残し、プロ入り後も1年目から活躍するような怪物もいる。しかし、歴代名選手の1年目の成績を見てみると一目瞭然で、高卒ルーキーにとってプロ入り1年目の壁は想像以上に高い。
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一覧からは、清原和博がいかに別次元のプレーヤーだったかがうかがえる。シーズン途中から1軍に定着した清原は、高卒1年目にして4番に座り本塁打を量産した。
三冠王を3度獲得した落合博満氏は後に、「清原のバッティングが一番良かったのはPLの時とプロ入り1年目の時」と語っている。一流の目から見ても清原のバッティングは、プロ入り1年目で完成の域に達していたのだろう。
遊撃手として開幕のスターティングメンバーに抜擢された立浪和義もその後、当時の星野仙一監督の期待を受け1軍に帯同。平凡な数字に終わったが、堅実な守備と強肩でアピールしたほか、22盗塁を記録するなど光るものを見せた。シーズンを通じて、1軍のレベルを経験できたことが翌年以降の活躍につながった。
その他の選手を見ても、高卒1年目で成績を残すことがいかに難しいかが分かる。その時のチーム事情や指揮官、そして首脳陣の意向もあるだろうが、まずは出場機会を得ることが難しい。
清原や立浪はもちろん、松井秀喜もある程度は打席に立つことができている。しかし、その他選手では安田尚憲の53打席が最高だ。2005年にロッテのリーグ優勝と日本一を牽引し、若くしてブレイクした今江年晶と西岡剛ですら、数字を見ると1年目は苦労していることがうかがえる。
指揮官の意向とチーム事情がどう影響するか
ロッテの井口資仁監督は、来年2月1日のキャンプ初日~オープン戦に藤原を実戦起用することを明かしており、内容が良ければ開幕1軍入りも示唆している。
同じ方針を取った1歳年上の安田の場合は、188cm、95kg(入団当時)という規格外の体格と、高校生離れした強烈な打球をキャンプで見せることでアピールに成功。オープン戦では4番に抜擢された。しかし、13打数1安打と苦しみ、開幕1軍入りは果たせなかった。
しかし、イースタン・リーグである程度の結果を残すとシーズン終盤には1軍に昇格。2017年の最多勝投手、東浜巨(ソフトバンク)からプロ入り初本塁打を放つなど、大器の片鱗を見せた。井口監督は2018年、安田を三塁で積極的に使う方針を明かしている。
安田をはじめ歴代の名選手達がそうであったように、藤原も打撃の面で苦しむことが予想される。本人も「今の打撃はプロで通用すると思っていない」と語っている。しかし、その一方で「足を一番アピールしたい」と、自身の最大の武器を前面に打ち出す意向を示している。
足を使った野球は、井口監督が掲げる大きなテーマ。昔、立浪が守備力を買われて開幕スタメンに抜擢されたように、藤原は足を存分にアピールすることで開幕1軍入りを手繰り寄せることができるかもしれない。遠投110mの強肩と足を活かした守備範囲の広さもアピールできれば尚良いだろう。
中堅手の第一候補は荻野貴司だがプロ入り後は怪我に泣かされ、順調に来ていた今季も死球で指を骨折し離脱した。シーズン途中のトレードで加入した快足と、強肩が武器の岡広海も虎視眈々と中堅レギュラーの座を狙っているが、打撃に難を抱える。
藤原は高卒1年目の壁を破ることができるだろうか。そして、レギュラーの座を奪い取り、公言通りに新人王を狙えるような活躍が見せられるのだろうか。期待して見守り続けたい。