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阪神入りの西勇輝 今季記録したメッセンジャーにも勝る指標とは

2018 12/14 07:00青木スラッガー
西勇輝,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

阪神首脳陣が評価した西の長所「QS」とは

前オリックスの西勇輝が、来シーズンから阪神で新たなキャリアをスタートさせる。阪神にはメッセンジャーがエースに君臨しているが、タフさと安定感が売りの彼と比べ、西はどんな特徴がある投手なのだろうか。

阪神首脳陣は、西がオリックスで残してきた「クオリティ・スタート(以下QS)」という指標を高く評価したという。

QSとは、先発投手がチームの勝敗にかかわらず「6投球回以上・3失点以内」に抑えることを言う。ゲームメイク能力を評価する指標で、もともとは先発投手の登板間隔が中4日と短く、1登板あたりの投球回数が少ない投手運用を行う大リーグで用いられていた。

先発完投志向が強いNPBでは、近年まであまり馴染みのない指標だったが、強力リリーフ陣を繋いで逃げ切る戦術が確立されてくると、先発投手の評価の仕方も変わってきた。7回、8回まで投げることができなくても、安定して6回まで試合をつくる投手は多くの勝利に貢献してくれる。

先発登板数に対するQSの達成割合を「QS率」と示し、現在では先発投手の安定感を示すものとしてこの指標が広く活用されている。阪神は伝統的にリリーフが優秀なチームだけに、安定してQSを達成できる投手の加入は価値の高い補強となりそうだ。

「QS率」よりも光る「HQS率」

今シーズンの西は、QS達成15回、25先発登板に対してQS率60%。阪神先発投手陣と比較すると、QS達成回数・QS率ともにメッセンジャーに次ぐ数字となった。

QS表

ⒸSPAIA

西のQS率は100投球回以上の投手でパ・リーグ10位、セ・リーグでも10位に相当し、優秀ではあるものの、ずば抜けているというほどではない。しかし、より詳細に登板結果を見れば、メッセンジャーと同等の数字を残した指標がある。「ハイクオリティ・スタート(以下HQS)」というものだ。

HQSとは、言葉の通りより優れたクオリティ・スタートの達成を意味する。「7投球回以上・2失点以下」が条件。大リーグより先発投手の登板間隔が長い日本では、こちらの方がゲームメイク能力を評価するのにふさわしいかもしれない。

HQS表

ⒸSPAIA

西のHQS達成はメッセンジャーに次ぐ10回。HQS率は39%のメッセンジャーをわずかだが上回る40%となる。またHQSと並べて、もうひとつ見ておきたい指標が1先発登板あたりの平均投球回数だ。こちらはメッセンジャーの6.20回に対し、西が6.49回と上回った。

QS率や防御率は岩貞祐太、秋山拓巳も近い数字を残しているが、HQS率と平均投球回数も見ると、西が阪神投手陣の中でメッセンジャーと並び、ワンランク上の存在であることがわかる。そしてその成績を何年も継続して残してきている。

特に平均投球回数については、今の阪神投手陣に必要なものを示す数字といえるだろう。

「60登板5人衆」も疲弊? 西にイニングイーターとしての期待

昨シーズン、阪神はNPB史上初の「60登板が5人」というリリーフ記録をつくった(岩崎優、桑原謙太朗、マテオ、ドリス、髙橋聡文)。いずれも防御率2点台以内と、このシーズンのリリーフ陣の働きは素晴らしかった。しかし、今シーズンの5人は軒並み成績を落としており、60登板の負担は大きかったといえる。

5人表

ⒸSPAIA

リリーフ陣への過度な負担を解消するには、先発投手を長く引っ張っていくしかないが、頼みのメッセンジャーは来シーズンで38歳。今シーズンを含め5年間の1試合あたりの平均投球回数は徐々に減ってきており、いつまでもベテラン頼りではいられない。

メッセ&西表

ⒸSPAIA

その中で西は長い投球回数を消化できる貴重な存在だ。メッセンジャーは中5日の登板間隔にも耐えられるタフさが売りのひとつだが、西には登板した試合で長くマウンドを守れるという、また違った意味でのタフさがある。そしてただイニングを稼ぐだけでなく、HQS率が示す通り、2点以内に失点を抑える力も持っている。

それぞれが持ち味を発揮し、ダブルエースとして阪神を支えていけるだろうか。