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三浦知良がクビになった日…今こそ見習いたいカズの逞しさ

三浦知良Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

53歳で13年ぶりにJ1復帰したキングカズ

日本サッカー界のレジェンド・横浜FCの三浦知良が2020年からJ1に復帰した。2007年以来、実に13年ぶり、今年2月で53歳という年齢を考えると驚異的だ。2月23日に行われた古巣・神戸との今季開幕戦はベンチ外となったためピッチに立つことはなかったが、中断しているリーグ戦が無事に再開されれば、いずれはJ1のピッチに立つキングカズにお目にかかれるだろう。

プロスポーツにおいて50代で現役を続けることがどれだけ大変で、どれだけ価値のあることか、今さら説明はいらない。サッカーより運動量の少ない野球でさえ、50歳で引退した山本昌が史上最高齢記録なのだ。

カズは昨季まで戦っていたJ2では、最年長出場記録(52歳)やギネスにも認定された最年長ゴール記録(50歳14日)を持っているが、J1では中山雅史の45歳2カ月1日が最年長出場記録、ゴールはジーコの持つ41歳3カ月12日が最年長記録のため、仮にカズがJ1でゴールを決めれば大幅に更新することになる。

逆に言えば、カズはいつユニフォームを脱ぐのか、あるいは脱がされるのか、常に「その日」と背中合わせの状況でもある。

ヴェルディ川崎、京都サンガから2度の戦力外通告

15歳で単身ブラジルに渡り、Jリーグ発足時からトッププレーヤーとして活躍するカズだが、決して順風満帆だった訳ではない。むしろ浮き沈みを繰り返してきた波乱万丈のサッカー人生だ。

日本サッカー界の悲願だったワールドカップに初出場を決めたものの、1998年フランス大会の直前合宿で代表メンバーから外れたことは、サッカーファンならずとも知っている。ただ、Jリーガーとしても、実は2度も「クビ」になっていることは、遠い昔の出来事として風化してきているのではないだろうか。

1回目はヴェルディ川崎時代。アジア人で初めてイタリア・セリエAのジェノアでプレーし、1995年から再びJリーグに復帰していたが、ヴェルディの経営から読売新聞社が撤退したためクラブの資金繰りが悪化。1998年オフ、高年俸のカズに戦力外通告がなされた。

カズはクロアチア・ザグレブと契約して現役続行。さらに日本代表時代の恩師で、当時京都パープルサンガで指揮を執っていた加茂周監督から声がかかり、三たびJリーグに復帰する。

京都ではキレを取り戻し、2000年シーズンにはJリーグ通算100ゴールを達成するなど、17得点の活躍。日本代表にも召集され、2002年の日韓共催ワールドカップに向けて、気運も盛り上がりつつあった。

しかし、この年のオフ、残留争いに敗れて翌年からJ2降格が決まっていたクラブは「年俸0円」の契約書を提示。チーム得点王に対して明確な説明をしないまま、戦力外を通告した。契約交渉後にカズの希望でともに会見に出席したクラブのフロント陣は「(0円提示は)移籍と報道されていたから」などと歯切れの悪い受け答えに終始。さすがのカズも苛立ちを隠せなかった。

逆境から何度も這い上がってきた男の生き様

その後、ヴィッセル神戸を経て横浜FCでボールを追い続けているが、日本サッカー界を背負ってきた男が夢にまで見たワールドカップ出場は果たせていない。もしかしたら、いまだ満たされない気持ちがモチベーションのひとつになっているのだろうか。

当然ながら、往年のパフォーマンスは望めない。いつ「3度目」が訪れてもおかしくない状況だ。それでもカズは前だけを向く。ウオーミングアップから誰よりも真剣に取り組み、地味なトレーニングも決して手を抜かない。

新型コロナウイルスの感染拡大は経済界にも大打撃を与え、解雇や雇い止めなど不穏な言葉が飛び交う。Jリーグが中断した今、2度の戦力外通告を乗り越え、自身の老いとも戦うカズは何を思うのか。

自身のオフィシャルサイトでは「自分たちを信じる」と力強いメッセージをしたためた。逆境に陥るたび、絶対に諦めることなく這い上がってきたカズの生き様には、たくさんのヒントが散りばめられている。

【人生すごろく】三浦知良の軌跡 〜 The Legend of KING KAZU 〜
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