横田栄司インタビュー 『デスノート THE MUSICAL』人間を弄び、弄ばれる死神に

インタビュー
舞台
2019.12.18
横田栄司

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死神・リュークがデスノートを人間界に落としたことで、翻弄される人々を描いた物語『デスノート THE MUSICAL』。3演目にしてキャストが一新される今回、物語の鍵を握るリュークを演じるのはシェイクスピア作品など数々の舞台に出演してきた横田栄司だ。吉田鋼太郎が斜に構えた死神・リュークを立ち上げた初演、石井一孝のパワフルさでミュージカルとして円熟味が増した再演。バトンを受け取った横田に、デスノートの魅力、稽古に向けての意気込みをたっぷりと語ってもらった。

ーー本作への出演が決まって、率直な感想を教えてください。

お声掛けいただいた時は、すごく意外で驚きました。ミュージカルですよ、歌いますよ、本当に僕でいいんですか? ってね。僕は初演時にイチ観客としてこの作品を観て、大いに楽しませてもらったんです。まさか自分が出演することになるなんて、当時はこれっぽっちも思っていなかったからびっくり。再演もすごく観たかったんだけど、僕はちょうど同じ新国立劇場で『ワーニャ伯父さん』(17年)という舞台に出演していて。お隣さんに(浦井)健治も(柿澤)勇人もいるのに行けなくて残念だな、と思った記憶があります。​

横田栄司

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ーー初日にご覧になった時、どんな感想をお持ちになりましたか?

まず歌声に圧倒されました。健治も勇人も、濱田(めぐみ)さんもとにかくすごかった。一人ひとりの個性が色濃かったです。あとは、高校生の授業やテニス、家の中の勉強部屋、警察の捜査本部とか、色々なシーンが同じ舞台上で具体的に展開されていくところが、演劇として面白いなって。度肝を抜かれたのはリュークの登場シーン。オーケストラピットの中から這い出て(吉田鋼太郎さんのモノマネをしながら)「ウォ〜〜〜〜つまんね〜〜〜〜!」って(笑)。なんだこの人、すげーのが出てきた!(笑)って。

いろいろな問題をはらんだ、すごく現代的な戯曲だなとも思いました。若者の鬱屈がデスノートに象徴されていて、退屈な日常の風穴であり、首をくくるロープでもあったわけで。人間の生死や愛情、親子の問題、国家権力など広く大きい問題を網羅した作品だなと思いました。

横田栄司

横田栄司

ーー横田さんが今考えているリュークの人物像を教えてください。人物と言うより“死神像”でしょうか?

そこは“人物”として捉えています。人間っぽく演じるほうが、結果的に死神っぽくなっていくんじゃないかなって。『デスノート THE MUSICAL』に出てくる登場人物は人間が悪魔に見える瞬間もあるし、その逆もある。逆説的なんですけど、死神を人間臭く演じたほうが悪魔になるんじゃないかと思っているんです。ま、「ワハハハハハハハ」って悪魔笑いはするかもしれないけど(笑)。

リュークには「退屈だ」ってセリフがたくさんあるように、とにかく暇なんです。退屈だからデスノートで人を使って人を殺して楽しんでいる。それって相当趣味の悪い遊びじゃない? 古代ローマ時代に大金持ちがコロッセオで奴隷たちに殺し合いをさせて退屈しのぎをしていたけど、それに通ずるものを感じます。リュークが最後「飽きちゃった」って言って物語を終わりにしますが、人間への負け惜しみなんじゃないかなって思ってて。「人間を支配したかったけど、ちょっとうまく行かなかったぜ、人間ってややこしくて面倒くさいな、これは俺の手に負えない」っていう感情をまとめて負け惜しみで「飽きちゃった」なんじゃないかなって。

役をどう深めていくかはこれから考えていくところなんですけど、とにかく楽しそうなリュークがいいなとは考えています。人間の世界でガンガン人間で遊ぶ。でも実はリュークの方が人間に遊ばれているのかもしれなくて……。どっちが弄ばれているのか分からないなっていうところまで盛り上げて行けたらいいですね。

横田栄司

横田栄司

ーーYouTubeで「哀れな人間」のミュージックビデオが公開されています。撮影とレコーディングに挑まれていかがでしたか?

レム役の(パク・)ヘナさんと一緒にレッスンを受けて、レコーディングに臨みましたが、まだまだだなっていう思いです。ここまでのベストは尽くしたんですけど、これからもっと稽古をして、さらに生き生きと歌えるようになりたいですね。ヘナさんはとにかく努力家なんです。ものすごい勢いで日本語を勉強していて、驚きのスピードで上達しています。初めて会った時1歳だった子供が、1週間後には10歳になっているような、それくらいのイメージ。外国でその国の言葉で俳優をするって相当な覚悟ですよ。並大抵ではない苦労と努力をしていると思います。

一緒に歌って、僕の覚悟もより強固になった気がします。正直僕はミュージカルに出演して歌うこと、しかも人気作に出演することにすごく怯えていたんです。だけどヘナさんのハートの強さに、僕がこんなんじゃ駄目だなって大きな勇気をもらいました。ヘナさんと一緒にプレ稽古ができてすごく良かったです。揺るがない心意気を持ったヘナさんのレムなので、僕はリュークとしてヘラヘラしてようかなって(笑)。きっとすごくいいコンビになると思います。

横田栄司

横田栄司

ーー今回フルキャストリニューアルに期待が高まります。初演再演の出演者の方々とは何かお話をしていますか。

キャストが変わっても、このカンパニーには栗山民也さんという作品を知り尽くしている人がいますから。僕は栗山さんに「まだその手があったか!」ってびっくりさせたい。稽古場で僕が見つけることも、周りからエネルギーやアイデアをもらうこともあると思うし。栗山さんが驚いたら、お客さんもびっくりするだろうし。

初演でリュークを演じた吉田鋼太郎さんとは、ことあるごとにチラチラっと『デスノート THE MUSICAL』のお話をしています。公式コメントにも「私は『役者の唄』という甘えがあった……横田は唄でドギモを抜いてください」みたいなメッセージをくださって。剥き出しの愛情でプレッシャーをかけられてますね(笑)。

僕は幸運にも、柿澤勇人はつい最近まで共演していたし、浦井健治も何度も共演している。どうしても行き詰まってしまった時には、ちょっとだけ彼らの力に頼ろうと思ってるんです。もちろんカンパニー内で解決できるのがベストだけど、ちょっと離れている人の意見が参考になることもありますから。勇人は早速YouTubeに公開されたミュージックビデオを見てくれたみたいで「なんだ〜栄司さんちゃんと歌ってるじゃん、つまんね〜」って愛あるコメントをくれました(笑)。

ーー最後に読者にメッセージをお願いします。

僕はいつも舞台が始まる前に「これは観ないと後で後悔するやつ」っていうのが直感で分かるんですが、今回はまさにそれ。チラシの雰囲気とかプロデューサーの方々の熱量なのか、理由は分からないけど分かるんです。初演再演を観た人も、今回初めての人も劇場でしか味わえない『デスノート』を体験しに来て欲しいです。僕たちは楽しませる自信があるので、もし迷っているなら劇場に来たほうがいいと思うな。「Don’t miss it!」どうぞ見逃さずに。

横田栄司

横田栄司

取材・文=永瀬夏海 撮影=山本 れお

公演情報

『デスノート THE MUSICAL』
 
■日程:2020年1月20日(月)~2月9日(日)
※静岡、大阪、福岡公演あり
■会場:東京建物 Brillia HALL (豊島区立芸術文化劇場)
 
【2月29日(土)~3月1日(日)大阪公演中止】
2月26日に発表された新型コロナウイルス感染症対策本部での首相の要請に従い、
感染拡大防止の観点から、以下の梅田芸術劇場主催公演を中止とすることを決定いたしました。
公演を心待ちにしてくださっていた皆さまには、多大なるご迷惑をおかけいたしますこと、心よりお詫び申し上げます。

 

【3月6日(金)~3月8日(日) 福岡公演中止】
新型コロナウイルス感染症に対し、博多座では公演を続けるため衛生対策を重ねてまいりましたが、2月26日の政府見解を受け、感染拡大を防ぐため、苦渋の決断ではございましたが、公演を中止させていただきます。
公演を楽しみにお待ち頂いているお客様には、大変申し訳ございませんが、何卒ご理解賜りますようお願いします。
 
■料金:S席:13,500円 A席:9,000円 B席:6,000円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可
※本公演のは主催者の同意のない有償譲渡が禁止されています。
★U-25:6,500円(※25歳以下対象・当日引換・要証明書)、B席:6,000円は、
12月21日(土)10:00~販売いたします。

 
■音楽:フランク・ワイルドホーン
■演出:栗山民也
■作詞:ジャック・マーフィー
■脚本:アイヴァン・メンチェル
■翻訳:徐賀世子
■訳詞:高橋亜子
 
■キャスト:
村井良大 甲斐翔真 髙橋颯
吉柳咲良 西田ひらり
パク・ヘナ 横田栄司 今井清隆
 
川口竜也 小原悠輝 金子大介 鎌田誠樹 上條駿 長尾哲平 廣瀬真平 藤田宏樹 本多釈人 松谷嵐 渡辺崇人
石丸椎菜 大内唯 コリ伽路 華花 浜平奈津美 妃白ゆあ 町屋美咲 湊陽奈 森莉那
 
■主催:日本テレビ  ホリプロ
■後援:TOKYO FM WOWOW
■企画制作:ホリプロ

■作品HP:https://horipro-stage.jp/stage/deathnote2020/
■公式SNSアカウント Twitter/Instagram:@dnmusical

放送情報

『見よ、これがミュージカルの傑作だ。デスノート。』
 
■放送日・時間・放送局:
2019年12月25日(水)24:00-24:30  BS日テレ
2020年1月3日(金)深夜  日本テレビ「東京暇人 デスノートTHE MUSICAL」スペシャル
2020年1月7日(火)27:29-27:59  日本テレビ
2020年1月11日(土)16:30-17:00  BS日テレ

JFN PARK『デスノート THE MUSICAL 楽屋ノート』
12月7日(土)より全7回で配信(毎週土曜日配信)

 【第1回・第2回】※12月7日、14日に放送済み
夜神月役(Wキャスト)のオリジナルキャスト浦井健治×新キャスト甲斐翔真による対談
【第3回・第4回】※12月21日、28日放送予定
夜神月役(Wキャスト)のオリジナルキャスト柿澤勇人×新キャスト村井良大による対談
※第5回以降もスペシャル対談が放送予定
 
「JFN  PARK」 URLはこちら
https://park.gsj.mobi/program/show/47789

TOKYO FM サンデースペシャル
『デスノート THE MUSICAL 楽屋ノート –特別編-』

12月29日(日)19:00 放送
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