「シブコ・フィーバー」に衰えなしも、渋野日向子が振るわなかった理由

  • 杉山茂樹●取材・文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 前日の2日目に「75」を叩き、オーバーパーなしのラウンド記録は「29」でストップした渋野日向子だったが、"シブコ・フィーバー"がひと息つく様子は微塵もなかった。

 試合会場となるチェリーヒルズゴルフクラブの最寄り駅、神戸電鉄粟生線「恵比須駅」に到着すれば、駅前広場には長蛇の列が伸びていた。会場行きのシャトルバスを待つ観衆の列である。「嵐のコンサートに来たみたいやなぁ~」とは、行列の前で並んでいたおばさんの言葉だ。

 マイカーで駆けつけた観衆は、その専用駐車場に到着するまで、大渋滞に巻き込まれたと聞く。渋野の出身はお隣の岡山県。彼女は、地元の誰もが誇りたくなるヒロインなのだろう――。

大勢のギャラリーに囲まれてプレーする渋野日向子大勢のギャラリーに囲まれてプレーする渋野日向子 日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯3日目。

 通算1オーバー。トップをいく畑岡奈紗と9打差でスタートした渋野だったが、2日目同様、ボギースタートとなった。2番のパー3でボギー。しかし、3番のパー5でバーディーを奪い返す。

 予想をはるかに超えた混雑で、こちらが現場に到着して生でそのプレーを見たのは、5番(パー4)からで、右のラフからのセカンドショットだった。その直前にほぼ同じ場所から打った同組のフェービー・ヤオはフェアウェーに出すだけで、3打目勝負を狙ったが、パワーのある渋野は果敢にもグリーンを狙い、2オンに成功した。

 さすがシブコ。しかし、グリーン右からのロングパットが残った。結果は、3パットのボギー。

 今大会のコースの特徴は、ラフがとても深いことだ。ティーショットでラフに捕まると、2打目は精度が極端に落ちる。一方で距離は短いので、フェアウェーに落とせば、ピンは狙いやすくなり、チャンスの芽が膨らむ。渋野はその流れに乗れていない。

 その後、7番、9番でバーディーを奪い、通算スコアはイーブンパー。この日、1アンダーで前半を折り返した。

 それとほぼ同じタイミングで最終組がスタート。トーナメントリーダーの畑岡は、その出だしの1番で早速バーディーを奪い、通算スコアを9アンダーとする。その差9打は変わらずだったが、そこから畑岡がバーディーを量産していったのに対し、渋野は逆にスコアを後退させる。

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