清涼飲料市場 コロナ禍で“ネット通販・健康・定番品”の支持拡大、メーカー各社の反応は

清涼飲料売場
〈ネット通販・定番品・健康訴求を強化〉
清涼飲料市場は、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛などの影響を受け、今年1~6月累計の販売数量は約10%減少した。コロナ禍において、多くの人が家で過ごす時間が増え、ネット通販が拡大するとともに、人々は安心感を求めて定番ブランドをいっそう支持するようになった。また、炭酸水などの無糖製品や野菜飲料など健康価値の高い飲料が人気となっている。

社会が大きく変化する時代に清涼飲料業界はどう対応していくのか。飲料各社にニューノーマルに向けた戦略をきいた。 

「世の中は販売チャネルのシフトが起こっている。スピード感を持って対応する」(メーカー)。今年の外出自粛期間は、都心部のコンビニエンスストアや自動販売機で飲料の売り上げが落ちる中、在宅勤務の増加も影響し、販売チャネルとしてはネット通販が大きく成長している。

ネット通販における清涼飲料製品の販売金額は、2014年以降から毎年約10%増で成長してきたが、2020年1~6月は家庭内消費の増加に伴い、昨年対比で30%以上の増加となった(日本コカ・コーラ調べ)。また、同期間のコカ・コーラシステムのネット通販の出荷数量は46%増加と大きく伸びたという。

キリンビバレッジも、ネット通販の主要チャネルにおける1~6月累計の販売数量が前年比約3割増になっている。ネット通販は、ケース販売がメインであり、種類では水や炭酸水、お茶の売れ行きが良い状況。ラベルを張らずに、はがす手間を省いたラベルレス製品も拡大している。

アサヒ飲料は、「コロナ禍でEC業態が大変伸長している。当社もECを中心に展開するラベルレス製品が、“おいしい水”“ウィルキンソン タンサン”を中心に好調で、ラベルレス合計の販売数量は前年比で約2倍となった」とする。 

日本コカ・コーラは、「“い・ろ・は・す”のラベルレス製品が好調だ。オンライン限定品の充実を図っていく。家庭内消費があると考える新カテゴリーにも取り組み、機会を広げたい」とし、8月3日からは、「綾鷹」「爽健美茶」「カナダドライ ザ・タンサン・ストロング」のラベルレス製品をネット通販限定で新たに導入した。 

また、人々の健康意識の高まりを受け、多くのメーカーが健康に配慮した製品の開発や価値伝達を強化する。無糖タイプの飲料がさらに増えるほか、乳酸菌関連やカフェインレス製品も広がりそうだ。 

伊藤園は、「健康意識がますます高まっているのでお茶や野菜飲料を訴求する。特に“茶カテキンの力”について全面的に訴求したい。トクホや機能性表示食品に注力する計画だ」とした。 

〈当面の課題は熱中症対策〉
8月に入って最優先で取り組む健康課題として各社が挙げているのが、熱中症対策の取り組みだ。 

大塚製薬によれば、外出自粛やリモートワークの影響から、巣ごもり生活の人が多く、総務省のデータでは室内での熱中症が非常に増え、6月は昨年に比べて約1・5倍の搬送者数になったという。屋外においても、今年は汗をかく機会が少なく、梅雨が明けてこのまま急激な暑さを迎えると身体が熱に慣れていないため、熱中症にかかりやすい。 

同社は、「“ポカリスエット”を中心に、今年の特殊状況下での熱中症予防啓発に力を入れる。熱中症とコロナの初期症状は似ている点があり、医療従事者の負担を減らすためにも、この活動に取り組んでいく」とする。 

キリンビバレッジも、「“世界のkitchenから ソルティライチ”を中心に熱中症対策を提案する。マスク着用や、人混みを避けて家で過ごす時間が増えるなど、例年とは違う夏を過ごすお客様の健康維持に貢献していく」とした。 

製品では、生活者の安心・安全を求めるニーズが高まり、各社の定番ブランドが支持される傾向にある。 

サントリー食品インターナショナルは、「消費者の様々な不安心理の中、より堅実志向が強まり、購買行動においては定番志向が強まる。その意味でも定番ブランドの“サントリー天然水”“BOSS”“伊右衛門”“特茶”の強化は今後もぶれずに継続する」と話す。 

日本コカ・コーラも、「コロナ禍で店頭への誘因が難しい状況なので、ブランドにもよるが新製品をどんどん投入する戦略などは効果的なのか、見つめ直す必要がある」とし、「コカ・コーラ」「ジョージア」「綾鷹」など5つの基幹ブランドを中心とした主力品を、キャンペーンなどの販促策も含めてサポートする考えだ。 

また、在宅勤務やオンライン飲み会・お茶会が増えたことから、各社は新たな飲用シーンに適した製品開発やコミュニケーション活動を進めている。社会の変化にいち早く対応するため、清涼飲料各社の挑戦が続いている。 

〈食品産業新聞 2020年8月3日付より〉