国宝犬山城で知られる愛知県犬山市。名鉄名古屋駅から犬山駅までは、特急に乗れば25分で到着する。そんな犬山駅直結マンション「エスタシオン犬山」の3階と6階〜8階が2017年3月下旬、デザイナーによってリノベーション賃貸マンションに生まれ変わった。駅の真上に位置するだけに、スーパーや公共施設も徒歩圏内という好立地だ。
デザインを担当するのは、名古屋を中心に活動するリノベーション会社「エイトデザイン」。名古屋市瑞穂(みずほ)区にあるキッズパーク付きの完全個室の親子カフェ「エイトパーク瑞穂店」(移転に伴い4/10に閉店)も大人気で、子育て世帯のハートをつかむのはお得意だ。「エスタシオン犬山」を所有する名鉄サイドから依頼を受け、「SUMU INUYAMA」という今回のプロジェクトが立ち上がったという。
マンション内はフロアごとにコンセプトが違い、3階は子育て世帯向け、6・7階は一人暮らし向け、8階は女性の一人暮らし向けとなっている。3階は「0to6 APR」というコンセプトのもと、就学前の、0歳から6歳までの子どもを持つ世帯向けとターゲットが明確だ。居室は3タイプ7室があり、面積は68m2〜77m2で賃料は10万5000円〜を予定(共益費別)。周辺の相場よりも少し高めという印象だ。
3階の通路は駅のホームをイメージし、壁を電車に見立てた配色。居室番号には名鉄電車の車両に描かれたものと同じ書体を使用した。共用部にあるキッズスペースには電車の運転席を模したコーナーが造られていて、速度計は実際に名鉄電車で使われていたものというこだわりよう。窓からのぞけば本物の名鉄電車が走る、電車好きのキッズにはたまらないロケーションだ。
7室ある居室の全室にキッズスペースとベビーフェンス、ベビーカー置場が完備されている。3つあるタイプにはそれぞれこんなキャッチコピーがつけられている。
・タイプ1)ハイハイグラウンドのあるおうち
・タイプ2)わんぱく兄弟の秘密基地
・タイプ3)わくわくがつまったのびのびハウス
タイプ1の「ハイハイグラウンドのあるおうち」は採光たっぷりのインナーバルコニーに、ベビーフェンスで囲んだハイハイグラウンドを設けている。
ハイハイする赤ちゃんを見守りながら、安心して家事ができるのが魅力だ。ハイハイグラウンドがあれば、少し大きくなってからも「ここだけ散らかしてOK」の遊び場にできそう。
タイプ2の「わんぱく兄弟の秘密基地」はキッズスペースとして「芝生マウンテン」や「すべり台ハウス」があり、家の中にいながらにしてアスレチック気分が楽しめる。壁に落書きできる黒板塗装もナイスだ。
タイプ3の「わくわくがつまったのびのびハウス」はハイハイグラウンドとミニすべり台があり、水まわりを集約させ家事動線をコンパクトにし、リビングや居室に広々した空間をとったことが特徴だという。どの部屋も、居室内にキッズスペースがあり、天候を気にせずいつでも子どもを遊ばせてあげられる。多少騒がしくしても、隣近所が同世代なので「お互いさま」なところも心強い!
テレビ設置場所の上、子どもが触れられない高さの位置にDVDを入れる棚が造り付けてあるなど、かゆいところに手が届く工夫がされているのは、名古屋発の子育てフリーマガジン「テニテオ」とコラボレーションしているから。アンケートでママたちから実際に届いた意見を参考に、室内がデザインされている。
「大胆に遊具を取り付けたデザインは、賃貸マンションだからこそできることです」と胸を張るのは、エイトデザインの常務取締役・伊藤太一さん。「子どもにとって、室内遊具が必要な期間は短い。賃貸マンションに造り付けてあれば、入居後すぐに使えて、退居するときにはそのまま置いていける。そして後々、面白い家に住んでいたなと思い出になる、期間限定の楽しみですね」
子育て世帯にうれしいのはハード面だけではない。「ここは入居したら終わりではなく、住んでからも楽しめる賃貸マンションです」と伊藤さんが言うように、今後は共用キッズスペースで、「テニテオ」主催の入居者限定イベントを開催していくという。入居者同士が仲良くなるためのワークショップや、子育てママのためのお役立ち講座などを予定している。4月には1階に、名古屋から移転する親子カフェ「エイトパーク」と、系列のクッキー専門店「COOKIE&COOKIE」がオープン。入居者限定で「エイトパーク」からのデリバリーサービスもあるので、ホームパーティーを開催する機会も増えそうだ。
ほかに、6〜8階は一人暮らし向けのリノベ賃貸となっており、6・7階は「F-BASE」、8階は女性向けフロアで「G-BASE」と名づけられている。すでに問い合わせも多く、入居が始まっている。
「観光地としては知られる犬山市ですが、住環境としては若い人が市外に出てしまう現状があります。そこで、まずは住みたい人を増やしたい。そして次第におしゃれな店などが増えて、街に活気が戻ればと、名鉄さんと一緒に考えたのがSUMU INUYAMAのプロジェクトです」と伊藤さん。賃貸なのでいつかはマンションを出る人も、街へ戻って住んでくれるような“つながり”をつくりたいという。また、今後も名鉄線沿線エリアをスタイリッシュに盛り上げていく計画があり、今回が第一弾というから楽しみだ。
母子2人きりで家にいる時間が長く、社会と離れてしまった気がして、孤独を感じることも多い子育て期間。こんな賃貸マンションに住むことができたら、ママならではの悩みや子どもへの小言も減って、毎日がもっと楽しくなるはず。転勤族でママ友をつくりたい人や、「本格的な家づくりは子どもが成長してから」と考える人にもオススメだ。あっという間に過ぎる子どもの成長過程で、忘れられない思い出をつくることができそう。