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NBA

「あの時、ジョーダンをガードしていた人」ミスをしていなくとも戦犯のように扱われたイーローのキャリア【NBA名脇役列伝・後編】

出野哲也

2020.07.11

“ザ・ショット”の“準主役”を演じたことで、イーロー(左)の知名度は不名誉な形で上昇。ただ、本人は気にしていないどころか喜んでいた節もある。(C)Getty Images

“ザ・ショット”の“準主役”を演じたことで、イーロー(左)の知名度は不名誉な形で上昇。ただ、本人は気にしていないどころか喜んでいた節もある。(C)Getty Images

■“ザ・ショット”を許し、まるで戦犯のような印象が

 1980年代前半は下位に低迷していたクリーブランド・キャバリアーズだが、無能な経営陣の退陣と、ドラフトで指名した若手の成長により、後半には強豪へと生まれ変わっていた。

「文字通りチーム全員でバスケットボールをしていたよ。みんなで協力し、特定の選手だけじゃなく、誰もがヒーローになれるチームだった」

 クレイグ・イーローはそう語り、ロサンゼルス・レイカーズのマジック・ジョンソンも、当時のキャブズを「1990年代を代表するチームになる」と予想していたほど。実際、前編の冒頭で述べたように1988-89シーズンには57勝をマークしている。

 ただし、この年は同地区のデトロイト・ピストンズが63勝をあげたため、プレーオフのシード順は3位となり、47勝でカンファレンス6位に入ったシカゴ・ブルズと1回戦で対戦することになった。もっとも、レギュラーシーズンの両者の対戦成績はキャブズの6戦全勝。キャブズ優位を予想する声が大半を占めたのは、こうした状況を考えれば当然だった。
 
 しかし、第1戦はイーローがチームトップの19得点を稼ぐも7点差で敗れ、いきなりホームコートアドバンテージを失う。2戦目こそ勝利したが、シカゴでの第3戦はマイケル・ジョーダンに44得点、10アシストの大爆発を許し、キャブズは瀬戸際に立たされた。

 第4戦も引き続き絶好調のジョーダンに50得点を奪われたが、それでも大事な場面でフリースローを落としてくれたおかげで、オーバータイムの末に何とか3点差で振り切る。こうして、2勝2敗のタイで運命の第5戦を迎えたのだった。

 足を捻って第3戦を欠場し、第4戦は6本のシュートをすべて外したイーローだったが、この日は乗りに乗っていた。ベンチスタートながら4本の3ポイントを含む9本のシュートを決め24得点。残り3秒では逆転となるレイアップを沈め、キャブズの勝利はもう目の前だった。

「次のオフェンスでマイケルにボールが渡るのは誰もがわかっていた。全力で彼を止めようとしたんだけど……」

 タイムアウト明け、インバウンドパスを受けたジョーダンを追いかけ、イーローはブロックしようと必死に跳び上がる。だが、イーローよりもコンマ数秒長く空中に留まったジョーダンの手から放たれたシュートは、するりとネットを通り抜け、これが決勝のブザービーターとなった。
 

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