国の「緊急事態宣言」解除後も、長らく「接待を伴う飲食店」への休業要請は続いていましたが、1日、愛知でもようやく解除となりました。

 およそ2か月ぶりに営業を再開した名古屋・錦のスナックにはお客さんは戻ってきたんでしょうか。

 名古屋の錦三で34年店を構える、スナック「ノーサイド」の田中ママ。

 愛知県の休業要請を受け、4月11日から5月31日まで臨時休業していました。

 およそ2か月ぶりの営業再開です。

田中ママ:
「対面はダメなので、ここに座っていただくとしたら、ここかな、1人。この辺かな…」


 席の間隔は1メートル以上空け、密にならないよう配慮。

 『新しい生活様式』を取り入れ、万全の態勢でお客さんを待ちます。しかし『接待を伴う飲食店』ならではの心配事も…。

田中ママ:
「いちいち(マスクを)外して、お酒をいただいて、またはめる。マスクしていてね、笑ってるのか怒ってるのか分からない状態で、接待飲食としてできるのかなと思うんですけど」


 午後5時半。「臨時休業」の貼り紙を剥がし、いよいよ営業再開です。

田中ママ:
「すごくドキドキしてる、ホントに。(34年前の)オープン当日のように」


 長かった2か月。もうお客さんが戻って来ないのでは、という不安もよぎります。すると…。

田中ママ:
「あっ!いらっしゃい、いらっしゃい。嬉しいな。(消毒を)お願いします」


 開店早々、20年来の常連客が訪ねて来てくれました。思わず笑顔がこぼれます。

田中ママ:
「久しぶりで嬉しいんじゃない?今日のお酒は一段と美味しいよ、きっと」

お客さん:
「だけど、誰も来んかったりして(笑)」


 お客さんから、お祝いの一杯。

田中ママ:
「ちょっとだけ(マスクを)取らせて頂いて。いただきまーす。格別のビールの味です。あー、おいしかった!これ(マスク)面倒くさいな、また付けるぞ」

 久しぶりの再会を喜んだのも束の間。話は自然とコロナのことに…。

田中ママ:
「梅雨に入ったら、コロナウイルスはどうなるんだろう…」

お客さん:
「普通は(ウイルスは)気温が上がって湿気があると…」

田中ママ:
「死ぬ?」

お客さん:
「死ぬっていうか、あんまり繁殖しないというか…」


 お客さんが熱唱した後は、目につかないところでマイクを消毒。

 さらに換気のため入口のドアは半開きにします。

お客さん:
「相変わらず元気そうで安心しました。お店も長いこと来るとね、お店のことも心配になるからね」


 その後も、次々とお客さんが訪れ、開店2時間半後には、4席のカウンターがいっぱいになりました。

 中には、こんな1人暮らしの男性も。

お客さん:
「何よりも寂しかったです」

田中ママ:
「寂しかった?そうだよね。その言葉って、私が早く店をやりたいなと思っていたのは、そういう言葉を聞きたかった」

お客さん:
「これ以上寂しくはなりたくない、もうなりたくない」

田中ママ:
「寂しくなりたくない?だよね」

お客さん:
「これが限界、ここで終わってほしい」


 午後11時、最後の客を見送り、再開初日の営業が終わりました。

田中ママ:
「(来店客は)8名ですね。さっき若いお客さんがおっしゃっていたけど、『孤独で寂しかった』って。だから今日は、私もお客様も嬉しい1日だったんです」

 こうした店が必要とされていることに、改めてやりがいを感じたという田中ママ。

田中ママ:
「さっきお帰りになったお客様がね、他の店にもおいでになったみたい。『結構(客が)入っていた』って。今から外を見に行きたいけど」


 夜の街に、再び活気が戻ってきたんでしょうか。午後11時過ぎの錦三をママと歩いてみると…。

田中ママ:
「この時間だったら、まだウロウロしていてもいいのに、すっからかんや。全然歩いてない」


 月曜日は元々、人通りがそれほど多くありませんが、それでも緊急事態宣言前の半分にも満たない状態です。

田中ママ:
「人だかりが少な過ぎますもん。もうちょっと喜んで、ウロウロしてほしいですよね」


 『夜の文化』が、なくなってしまうのではないか。そんな不安も抱きつつ、それでもここに来ないと味わえない楽しみがあると田中ママはいいます。

田中ママ:
「(お客さんが)家で手酌で飲んでいるお酒と、こういう所に来て作って頂いて飲むお酒。お酒は一緒なんだけれども、『気分的に違う、味が違う』とおっしゃった。その違いが、私たちの接待飲食の仕事なんですよ。違う味にする、その雰囲気を作るのが、私たち、錦の何千軒ある飲食店の皆さんの心構えですから」


 東海地方最大の繁華街「錦三」。「錦の灯」が消えないように、これから街は再生に向け動き出します。