巨人・阿部慎之助二軍監督(40)の“言葉力”がヤングGを奮い立たせている。連日のように守備や打撃の指導にと精力的に動き回っている新指揮官はキャンプ第2クール初日となった6日にドミニカ共和国出身の育成2年目、イスラエル・モタ外野手(24)を相手に母国語のスペイン語を交えて鼓舞するなど巧みなトーク力を披露。その指導力に球団内の評価もうなぎ上りだ。

 青年監督のこの日のターゲットは規格外のパワーを持つドミニカンだった。投内連係で一塁に入った外野手のモタの隣で金のノックバットをついて仁王立ち。動きを注視し、一塁ベースへの入り方を見て思わず動いた。自らステップとベースの踏み方を実演しながら約30分間の密着指導。さらに近隣の練習グラウンドに移るとモタに外野ノックを打ち続けた。

 そこで阿部二軍監督が繰り出したのがモタの母国語であるスペイン語だった。ロペス(現DeNA)ら巨人の歴代助っ人と仲のいい新指揮官はスペイン語にも精通しており、いいプレーに「ボニータ(素晴らしい)」「ムーチョ(巨大な)・マネー」と繰り返し、やる気をあおった。

 モタは7―1で完勝した4日のファーム対一軍の紅白戦で2点打と特大ファウルを放ち、原監督から「印象に残った」と評価された今キャンプの目玉だ。阿部二軍監督は「(一塁は)一軍のチャンスのポジションであることは間違いないし、一軍に呼ばれてやる機会もあるかもしれないので。その準備だけはしっかりさせた」と猛特訓の意図を説明。さらに「その気にさせてあげるのが僕らの仕事なので。モチベーションを上げてあげられるようにしたい」と続けた。

 巧みな言葉のチョイスは日本人選手に対しても同様だ。ノックで足の止まったナインに「お前しかいねえよ。そこを取るのは」と怒鳴って観客を笑わせ、泥を気にする選手には「大丈夫、クリーニング屋さんがやってくれる」とチクリ。S班の坂本の巧みなノック処理を横目で見た若手には「見てみろ、涼しい顔してノック受けてるだろ」とハッパをかけた。

 もちろん、ただの熱血ではない。長年、捕手を務めただけに心理戦もお手のモノ。4日の紅白戦前は「真面目に打つな。いい加減に打て」と野手にまさかの指示。途中出場で2安打の村上は「監督の言葉のおかげで楽に打てました」と計14安打の呼び水になったと証言する。

 そんな姿に球団幹部は「鬼軍曹タイプなのかと思っていたけど、認識を改めないと。本当にクレバー」と改めて脱帽。今後も巧みな言葉による操縦術で二軍全体をレベルアップさせる。