昨年限りで阪神を退団し、移籍先を模索していた鳥谷敬内野手(38)のロッテ入りが10日、決まった。2月のキャンプが終わり、オープン戦が中盤に差し掛かるも交渉がまとまらず「このまま引退か」とまでささやかれていたが、開幕にギリギリ間に合った格好だ。ようやく17年目のスタートラインに立ったが、それにしてもなぜ、ここまでもつれたのか――。

 阪神からの引退勧告を拒否し、現役続行を決断した鳥谷の思いが、ようやく形になった。3月以降の契約は最近のメジャーでは珍しくないが日本では異例。最近では2018年3月9日にカブスをFAになった上原が巨人と契約した。

 再起の場はパ・リーグのロッテ。現役時代から沖縄で自主トレをともにするなど、鳥谷を知り尽くしている井口監督の存在も大きかった。15年ぶりの優勝のためにも鳥谷の力と経験が必要。チームは若返りを図っており、ベテランにレギュラーを確約できる状況ではない。それでも若手との生き残り競争を戦い抜く覚悟がすでにできている。

 関係者の話を総合すると、今回の決定に至るまでにはクリアすべき問題も多かったという。大きなネックとなったとみられるのは、鳥谷と球団の交渉の間に立った、代理人的な人物の存在。金銭面の条件はともかく、出場試合数の保証など、球団サイドには受け入れがたい条件が複数、含まれていたが、最終的には鳥谷サイドが譲歩したという。それもこれも、鳥谷の「勝負をしたい」という強い思いが先に立ったからなのだろう。

 本紙は1月18日発行の1面で鳥谷とロッテとの交渉の模様を真っ先に報道。一時は「獲得に難色を示していた」とされるロッテが、鳥谷の移籍先に再浮上した経緯についても「井口監督はまだあきらめていない。鳥谷サイドも軟化している」と触れ「近日中にも」交渉がまとまる可能性を指摘していた。

 ロッテナインたちも鳥谷の加入を熱望しており、この時点で「選手の間ではロッテに来てほしいという意見が圧倒的に多いんです。野球に対する取り組み、姿勢がお手本になるほど素晴らしいと聞いているので、みんな『一度一緒にやってみたい』と…」「若手が育っているとはいえ、シーズンを通して活躍できるか、となると不安が多い。優勝を狙うなら鳥谷さんが必要だと思います」との声も出ていた。

 鳥谷は近日中にチームに合流。キャンプは過ごしていないものの、オフの間は現役続行を念頭に置き、ハワイなどで精力的な自主トレを行っており、調整に抜かりはない。

 同じポジションの若手選手はもちろん、佐々木朗希投手(18=大船渡)ら話題のルーキーたちにも、プロ野球2位の1939試合連続出場、同5位の667試合連続フルイニング出場などの記録を誇る「鉄人」の加入は、大いに刺激になるはずだ。練習、試合への準備は最高のお手本になるだろう。

 阪神時代に見慣れたタテジマのユニホームは脱いでしまったが…。ロッテのピンストライプのユニホームは、きっと鳥谷に似合うことだろう。