青年監督に次世代の巨人を託す。原辰徳監督(61)が本紙の単独インタビューに応じ、後継者の最有力候補・阿部慎之助二軍監督(40)への思いを激白した。2020年までプレーすることを望んだG史上最強捕手の現役生活にピリオドを打ち、指導者の第一歩として二軍監督に据えた意図は何か。すでに指揮官としての“英才教育”を始めていることも明かした熟練指揮官が、阿部二軍監督に求めた理想の監督像は――。

 ――大補強なく迎えたキャンプ。オープン戦では最下位という結果だった。それでもこの期間には、これまで以上に育成に重点を置き、多くの若手がアピールした

 原監督 今までも(育成を)怠ったわけじゃなくて(このオフは補強に関して)縁がなかったっていうことでしょうね。FA、トレードも含めて。ただ、現実論として非常に楽しみな若い人たちもいるということだよね。(育成から支配下に昇格した)モタであったりね。去年、そこそこ種をまいてあげた人たちも、もしかしたら実る状態になる。チームは今、100人弱ぐらいいるわけでしょ? そのなかで伸びていく人が1人でも2人でもいればいいと思いますね。

 ――チームの編成上、最も大きな決断は阿部の引退。一軍ヘッドコーチという選択肢もあったと思うが、あえて二軍監督としたのは

 原監督 彼と話をして、コーチングも含めて非常にいい「慎之助世代」のコーチ(今季巨人の二軍スタッフは、村田修一野手総合コーチ=39、杉内俊哉投手コーチ=39、木佐貫洋投手コーチ=39、実松一成バッテリーコーチ=39)ら阿部二軍監督と近い世代のコーチが揃っている。)がファームに集まったというね。これはもう(阿部に)任せた方がいいんではないかなと。自分のものから入り、それでまた違った形で違う勉強をする時期もそこに入ってくるかもしれない。でも、彼は類いまれな野球選手としての経験を持っている。選ばれた指導者になれる人だと思う。だから、二軍監督は務まるはずだと。適役であろうと。

 ――原監督の任期は昨季から3年間。2021年までに監督教育を終えたいという考えはあるのか

 原監督 僕なんていうのは長くやるとか3年とかということではなくてね。やはり、次の世代につなげるというのは役割としてすごく大きいと思ってる。次世代のジャイアンツにつなげると。ジャイアンツというのは、せっかく素晴らしいバトンを渡しながら来ているわけじゃない?(歴代監督は)ジャイアンツの生粋(生え抜き)のみたいなね。そういう先輩たちがいて、阿部慎之助という素晴らしい後輩がジャイアンツにいる。そこは、上に向かっていってほしいというのはありますよね。

 ――具体的に阿部二軍監督には何か指導をしたのか

 原監督:僕が言ったのはね…。叱咤激励、選手にとって聞いたら気持ちのいい言葉ではないと。その時にはね「慎之助、一回ツバをのみ込めよ。もう一度考えなさい」って。それは言いましたね。

 ――二軍監督就任後に「期待できる若手はいない」と発言したことがあった

 原監督:それでも、これが必要だと。だったら、それは言いなさい。しかし、一回ツバをのみ込んでから。これはちょっとまだ尚早かなと思ったらやめる。(発言する前に)考えるっていうのは必要になってくるよと。まあ、動物的にパンパンパン!って言うのは彼の良さでもある。プラスのことはいい。しかし、マイナスのことというのは、一回ツバをのみ込もうなって。それだけの存在を持っている人だから。

 ――原監督も発言には普段から気を使っている

 原監督:やっぱりそれは大事だと思う。選手も聞いている人は聞いているだろうしね。チームが良しとする状況のなかでの言葉を発したいなって思うよね。それがしかし、ある種、愛のムチ的な部分であっても痛みを伴う言葉も、時にはあるかもしれない。それはそれでいいわけだよね。

 ――言葉選びなどは、やはり監督として必要な要素か

 原監督:と、思うね。やっぱり言葉で伝えるっていうのは監督の“武器”ですよ。それは(阿部二軍監督にも)伝えてあげなきゃいけないよね。でも、彼は勉強する気持ちがあるからいいよね。

 ――最後に。阿部慎之助にはどういう監督になってもらいたいか

 原監督:僕が想像しているような監督さんでは面白くないでしょう。僕をはるかに超えなきゃいけない。(選手としては)もう僕のことは超えていると思うけど。ただ、僕には(監督の)経験というものがあるわけでね。そこは何らかの形で伝えられたら、というのはありますよね。