【赤ペン‼赤坂英一】いかにも地域密着型のカープらしくて、佐々岡監督ならではの気遣いを感じさせる激励だった。コロナ禍が続く先月28日、佐々岡監督が大瀬良、薮田、ドラフト1位新人・森下と感染症指定医療機関・舟入市民病院を訪問。ユニホーム姿で駐車場に現れ、病棟内部の医療従事者や患者たちに約10分間、何度も手を振ってエールを送った。

「僕たちは(こういう形で)元気、勇気を与えることしかできない。少しでもそういうことができればという気持ちです」
 そう訪問の理由を明かした指揮官は、自分と3投手のユニホームを病院に寄贈。「あなたの勇気ある献身に感謝します」という熱いメッセージとサインが入れられたユニホームは、いま病院内に飾られているはずだ。

 新型コロナに感染すると、風邪によく似た症状が出る。単なる風邪と勘違いして重症化する患者も後を絶たないらしい。実は佐々岡監督自身、現役時代に風邪で非常に痛い目に遭っている。

 1996年、前半戦で首位を独走していた広島は、巨人に11・5ゲーム差を引っ繰り返され、大逆転優勝を許した。長嶋監督の名セリフ「メークドラマ」が流行語大賞を受賞したことでもファンの記憶に残っている。当時、広島の敗因は、三村監督が逃げ切ろうと焦るあまり、抑えの佐々岡を酷使したことにあると言われた。特に終盤の8連投が大きかったと、厳しく批判されている。

 あのメークドラマからちょうど20年後の2016年、カープが巨人を振り切って25年ぶりに優勝したのも何かの因縁か。その年、拙著「すごい!広島カープ」の取材で佐々岡二軍投手コーチ(当時)に話を聞く機会を得た私は、直接確かめてみた。「96年のカープの敗因は、本当に8連投にあったんですか」と。

「いや、あの年はオールスター明けに、チームが集団で風邪にやられたんですよ。僕も風邪に感染して、山内泰幸が代わりに抑えをやったら、横浜で3連敗(前後を含めると5連敗)。あそこからおかしくなり、ズルズルいってしまったんです」

 この証言から推察すると、「風邪」はインフルエンザで、クラスターが発生していたものと思われる。こうしてウイルスは広島から優勝を奪い、以後20年間、暗黒時代に入ることになったのだ。

 コロナ禍の終息後は、あの年の悔しさを晴らす優勝を、ぜひ佐々岡監督につかみ取ってほしい。