原巨人が早くも動いた。巨人は池田駿投手(27)と楽天のゼラス・ウィーラー内野手(33)の交換トレードが成立したと発表した。開幕後、わずか1週間での電撃トレードは球界を驚かせたが、巨人がウィーラーの獲得に動いた背景にはさまざまな要因がある。コロナ禍の世界的拡大はもちろんなのだが、もう一つ、球団サイドの根本的な〝誤算〟もあった。

 25日の広島戦(東京ドーム)は終盤に粘りをみせて決着つかず、今季の特別規定により延長10回5―5で引き分けた。ただ、この日最大の衝撃が走ったのは試合前だった。球団は4年目左腕の池田を放出し、ウィーラーを獲得することで合意した。

 投手陣の強化を図る楽天と右の大砲を求める巨人の補強ポイントが合致。原辰徳監督(61)は「間違いなく戦力になってくれると思っています。いい補強をしてくれた」と新助っ人に大きな期待を寄せた。構想では守備位置は一塁か左翼を念頭に置く一方で「ウチのチームも決してレベルの低いチームではない」と特別扱いはしない方針を示した。

 それにしても、開幕直後のトレード劇はなぜ起きたのか。もちろん、地球規模で蔓延した新型コロナも大きく影響している。感染拡大によってメジャーリーグなども機能不全に陥り、海外でのスカウト活動も停止せざるを得なかった。新戦力を獲得しても渡航には多くの制約があり、国内でのトレード補強に踏み切らざるを得なかった。その点、ウィーラーは楽天でプレーした5年間で106本塁打。日本野球での実績もあり、〝安全策〟で着地した格好だ。

 コロナ禍が補強態勢にまで暗い影を落としたのは事実だが、ここまでズレ込んだそもそもの原因は球団側の〝空振り〟もある。昨オフはFA市場でも投手で美馬(楽天→ロッテ)、野手では鈴木(ロッテ→楽天)の獲得に失敗。7年ぶりのFA補強ゼロに終わったが、球団関係者も「『彼』を持っていかれちゃったからね…」とボヤくほど外国人補強でも苦戦を強いられていた。

 助っ人で穴埋めを図ったのは、先発投手と右の長距離打者。投手ではサンチェスを獲得したが、右の大砲の〝本命〟の一人としてリストアップしていた「彼」こそが、メジャー在籍6年で63発のヘスス・アギラル内野手(29=マーリンズ)だった。

 ブルワーズ時代の2018年には打率2割7分4厘、35本塁打、108打点をマークし、地区優勝にも貢献した。191センチ、113キロの巨漢戦士は19年はレイズでプレーし、巨人は獲得調査を進めたが、アギラルはあえなくマーリンズに移籍…。大砲探しが長期化する大きな要因となった。

 もちろん、アギラルが加入していてもどれだけの活躍をしていたかは未知数だが、ウィーラーには同等か、それ以上の活躍が求められていることは確か。30日に入団会見を行う大砲の今後が注目される。