さあ、本拠地Vへ――。巨人は29日のDeNA戦(横浜)に2―5で競り負けたが、2位の中日が敗れたため優勝マジックはいよいよ「1」となった。地味なカウントダウンながら、4番の重責を背負いながら奮闘してきたのが岡本和真内野手(24)だ。27本塁打、84打点はいずれもリーグトップで2冠の可能性も十分。風格すら漂ってきた若き主砲には、実は〝ON魂〟も受け継がれている。

 歓喜の瞬間は、またもやお預けとなった。打線が再三の好機を生かせず、得点は丸の通算200本塁打となる26号ソロと犠飛による2点のみ。援護がない中、救援陣が打ち込まれてV目前で今季ワーストの5連敗となった。とはいえ、30日は今季勝率7割6厘(36勝15敗2分け)を誇る東京ドームへ戻り、同球場に限れば5戦全勝のヤクルト戦。原監督は「果報は寝て待てという心境にはなりたくないね」と自力Vを誓った。

 新型コロナ禍でのシーズンとなった今季、岡本の活躍なくして首位には立てなかっただろう。今月こそ3本塁打にとどまっているが、打率2割7分6厘、27本塁打、84打点の成績。本人は「特別なことは考えていません。得点圏の時はランナーをかえすこと、ランナーがいない時はチャンスメークすること」とシンプル思考ながら4番として大きく貢献してきた。

 年々、頼もしさを増し、激しいタイトル争いまで演じている主砲には、伝説のONにも通じる巨人伝統の〝4番の血〟も流れている。それを注入したのは元木大介ヘッドコーチ(48)だった。初入閣した昨季は内野守備兼打撃コーチの立場だったが、当時から岡本とチームの将来を考えながら口酸っぱく言い聞かせていた。

「この球団の4番バッターは打てないと叩かれるんだよ。ただ、打てば『さすが』と言われる。長嶋さんや王さんは『ジャイアンツの4番は12球団の4番なんだ』と感じながらやっていたんだ。和真にもそうなってほしい。お前が打てなきゃ、チームは負けるんだ」

 時には、こうした熱弁がかえって〝重荷〟になったこともあったというが、岡本がタイトル争いに「意識していません」と繰り返すのも、そのためだろう。個人成績よりも最優先すべきはチームが勝つための一打。もっともアーチを量産し、打点も荒稼ぎしてタイトルも奪取となれば、チームもG党も万々歳ではあるが…。

 この日の岡本は2打数無安打に終わったが、8回にパットンから死球を受けて珍しく怒りをあらわにするなど闘志はみなぎるばかり。連敗のウップンを本拠地で晴らし、連覇を引き寄せられるか――。