道は切り開けるのか。約4か月後に迫った東京五輪のボクシング代表に男女6人が決定。本来であれば喜びに浸りたいところだが、選手たちは見えない敵に頭を悩ましている。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今月中旬に実施された欧州予選(ロンドン)は打ち切りとなり、今月下旬に開催予定だった米大陸予選(ブエノスアイレス)は取りやめ。現時点で代表に決まっていない日本人選手5人の運命を左右する5月の世界最終予選(パリ)の開催も見通しが立たず、五輪本番までにすべての代表選手が決まらない可能性が出てきた。何より国内外での延期論の高まりで、五輪の開催自体も危ぶまれる。

 この状況について世界3階級制覇の田中恒成(24=畑中)の兄で、男子フライ級の田中亮明(26=中京学院大中京高教)は「とりあえず五輪に出て、自分のボクシングを見てほしいのでやってほしい。できるだけ早く終息してほしい」と語る一方で「(他の候補選手も)いいボクサーだと知っているので、世界最終予選はやってほしい。それで五輪がずれるのであれば、ずらしてほしい」と胸中は複雑だ。

 男子ウエルター級の岡沢セオン(24=鹿児島県体協)も「予選をしっかりやって、予選から(五輪までの)期間がないとフェアじゃない」と言い、選手たちからも“延期もやむを得ず”との声が相次いだ。

 男子の日本代表チームの愛称は「阿修羅ジャパン」。阿修羅像のごとく6本の腕で選手たちに救いの手を差し伸べてくれるのか。それともこのまま延期となるのか。選手たちも“決断”を待っている。