希代のナルシシストが快挙だ! 全日本プロレスの3冠ヘビー級王者・宮原健斗(30)がV10戦(11日、後楽園)で青柳優馬(24)を下し、ついに川田利明(56)が持つ最多連続防衛記録に並んだ。15年ぶりの偉業を達成した王者にとって、数字以上に特別な出来事。王道戦士を志すきっかけが、実は偉大なレジェンド、川田の存在だったのだ。

 3冠初挑戦の青柳に右腕を狙われた宮原は、何度も悶絶した。それでも持ち前の耐久力で猛攻をしのぐと、ブラックアウト(ヒザ蹴り)で逆転。最後は、投入を示唆していたかつてのフィニッシュホールド、ブレイクハート(変型ペディグリー)からシャットダウンスープレックスホールドにつないで3カウントを奪った。

 試合後は自身が率いるユニット「ネクストリーム」からの卒業を青柳に勧告。さらに「宮原健斗はこのまま独走させていただく! 誰かストップさせたいやつはいるのか?」と呼びかけ、これに応じた“暴走男”諏訪魔(43)と3月23日後楽園大会でのV11戦が濃厚となった。

 これで川田と並び全日本の歴史に名を刻んだ。その高揚感からか、普段は過去を振り返らない男にしては珍しく「あの時代の全日本プロレスに夢を見て、はまりましたから。それは事実ですよ」と語り、1990年代の全日本で三沢光晴(故人)らライバルたちと激闘を繰り広げた川田こそが、レスラー人生の原点であることを明かした。

「格闘技とプロレスがごちゃごちゃになり始めたころに(川田は)プロレスを貫いた選手だったから、ファンとしてうれしかったんですよね。あとは相手が嫌がるどころか、自分でも嫌なことをやったじゃないですか。それって僕も常に大事にしていて。レスラーが嫌がることって、ファンが喜ぶことだと思うんですよ。それはあの人から学んで常に意識してますね」

 2008年2月に健介オフィスのリングでデビューしながら、運命に導かれるように14年1月、全日本に移籍。団体のエースに成長した。見えない“デンジャラスK”の背中を追い続けた結果だった。次は新記録樹立がかかる一戦。「もういいでしょ。僕にとって大事なのは過去よりも未来ですから」。いよいよ新たな時代が幕開けする。