1月4、5日の新日本プロレス東京ドーム大会で現役を引退した“ジュニアのレジェンド”獣神サンダー・ライガーが、世界最大プロレス団体の米「WWE」殿堂入りを果たすことが本紙の取材で明らかになった。日本人レスラーとしては2010年のアントニオ猪木氏(77)、15年の藤波辰爾(66)に続く史上3人目の快挙(レガシー部門では力道山、ヒロ・マツダ、新間寿氏が受賞)。ジュニアヘビー級の地位を築き上げた第一人者に、世界が認める新たな勲章が加わった。

 30年8か月にわたる現役生活を終えたばかりの獣神に、最高級の栄誉が贈られる。複数のWWE関係者によると、名誉殿堂「ホール・オブ・フェイム」の2020年度の殿堂者としてライガーが加わることが内定。すでに新日本プロレスと本人にも伝えられたという。

 本紙の取材に応じたライガーは「もちろんうれしいですね。いただけるものは何でもいただきますよ」と豪快に笑った。その一方で、個人の力だけでは決して受賞できなかったと強調する。「僕はとにかく自分が楽しかったらいいというか、プロレスが好きだから好きなことをやろうって思ってた。それを結果的にファンの皆さんが『ライガー面白いよ』『よくやってくれた』ってことになった。だから今回、勲章をいただきましたけど、これは日本、海外のファンの皆さんと一緒に取ったって感じだね」と感謝の言葉を述べた。

 1989年4月24日の東京ドーム大会でデビューし、平成の時代を駆け抜けた。世界のプロレス界にジュニアヘビー級を確立した功績は大きい。90年代にはWCWで世界ライトヘビー級王座を獲得するなど米国マットでも活躍し、海外での知名度も抜群に高い。15年には新日プロ所属選手としてWWE・NXTに参戦。WWEの前身にあたるWWFと新日プロが提携を解消した85年から約30年ぶりに両団体の壁を打ち破ったのも、ライガーだからこそ成し得たことだった。

 ともに新日ジュニア黄金期を築いたエディ・ゲレロら世界各国で活躍したライバルの存在も大きかった。「米国、メキシコ、ヨーロッパでそういう人たちがいたからこそ、世界で試合ができたんです。やっぱりプロレスは一人じゃできない。これは間違いないよ」(ライガー)。AJスタイルズ(42)、フィン・ベイラー(38)、後輩にあたる中邑真輔(40)、KUSHIDA(36)ら現在のWWEマットで活躍する新日プロ出身者をはじめ、世界中のレスラーからリスペクトされているのは事実。今回の殿堂入りに異論の余地はないだろう。

 さらに師匠の猪木氏、レスラーを志すきっかけとなった藤波に続く3人目の栄誉というのも、格別な喜びとなっている。「すみませーん!って本当に思うわ(笑い)。マジでいいのかなって…。ただ何回も言うけど、僕個人の勲章じゃない。ジュニアでくくるのではなく『日本のプロレス』として受け取りたいなって気持ちはありますよね。家族の協力にも感謝してる。だから『どうだ、見たか? 俺すげえだろ』じゃなく『みんなで取ったんだね』って言いたいんだよね」と偽らざる心境を明かした。

 殿堂入りセレモニー「WWEホール・オブ・フェイム2020」は4月5日(日本時間6日)の祭典「レッスルマニア36」(フロリダ州タンパ)を直前に控えた4月2日(同3日)に同州タンパのアマリー・アリーナで行われる。今年度はすでにバティスタ、nWо、ベラ・ツインズ、JBL、デイビーボーイ・スミスの殿堂入りが発表済み。第6号として、日本が誇る世界の獣神がさんぜんと名を連ねる。

【記念セレモニー】新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、米国でもプロスポーツやイベントの中止・延期が相次いでいる。野球のメジャーリーグ(MLB)は開幕戦を延期し、プロバスケットボールリーグ(NBA)とアイスホッケーのNHL、サッカーのプロリーグMLSもシーズンを中断。ゴルフの祭典「マスターズ」も延期が発表された。

 そうした中でWWEは13日のスマックダウン大会の会場をフロリダ州オーランドのパフォーマンスセンターに変更し、無観客試合を生配信する対応を取った。関係者によると、現段階で「レッスルマニア36」、及び殿堂入り式典は開催予定とのことだが、先行き不透明な状況が続いているだけに予断は許さない。ライガーは「今こういう状況だからどうなるかは分からないけど…」と複雑な表情を浮かべつつも「ファンもフロントも全部ひっくるめての受賞だと思ってるんで、ぜひ行って受け取りたい気持ちはありますよね。ファンの皆さんと、日本のプロレスに『ありがとう、取れたよ』って発信したい」と話した。

☆じゅうしんサンダー・ライガー=1989年4月24日、漫画家の永井豪宅で誕生。同日の新日本プロレス東京ドーム大会(対小林邦昭)で獣神ライガーとしてデビュー。同年5月25日にIWGPジュニアヘビー級王座を戴冠し、90年1月に獣神サンダー・ライガーに改名した。「トップ・オブ・ザ・スーパー・ジュニア」や「スーパーJカップ」などで優勝を飾った他、ヘビー級戦線でも活躍。今年1月の東京ドーム大会で引退した。正体は「山田恵一」とされる。現役時は170センチ、95キロ。