J1神戸の元日本代表DF酒井高徳(29)に新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査で陽性反応が出たことで、日本サッカー界に衝撃が走った。Jリーガーの感染確認は初めてで、チームメートや他クラブへの影響が懸念されている。さらには今後の感染拡大を阻止するため、欧州各国クラブと同じように「全Jクラブ活動停止」を求める声が出てきた。

 神戸によると、酒井は25日の夜中に38度の発熱があり、26日の練習を欠席。兵庫県内の病院で急性上気道炎と診断されたという。28日に嗅覚異常を訴えたため、PCR検査を実施し、30日午後5時に陽性判定が出た。

 神戸はウェブ上で緊急会見を開き、立花陽三社長(49)が「ご心配をおかけすることになり大変申し訳ありません」と陳謝。三浦淳寛スポーツダイレクター(SD=45)は、平熱に戻るも嗅覚や味覚が回復していないと説明した。クラブ側によると、現時点で他に感染が疑われる症状のある選手やスタッフはいないという。

 また、酒井の発熱2週間前からの行動確認と濃厚接触者の特定を行っていく方針で、元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(35)ら同僚はもちろん、練習試合を実施した相手クラブ選手への影響も懸念される。三浦SDは「相手のこともあるので(対戦した)クラブ名は控えさせていただきたい」と話した。

 神戸は本拠地が隣接するプロ野球・阪神で藤浪晋太郎投手(25)ら選手への感染が判明したため、より緊張感を高めて感染防止に努めていたが、食い止められなかった。酒井は「自分から発信できる事は、コロナウイルスは、本当にどこに潜んでいるかわからないという事です」と苦悩をにじませたように、感染の危険はサッカー界でも日に日に高まっている。

 こうした現状に、あるJクラブ関係者は「もう止まらないよ。欧州みたいに全クラブが活動停止にしないとダメじゃないか」と指摘。感染が急拡大する欧州ではスペイン1部バルセロナやレアル・マドリード、イタリア1部ユベントスやインテルなど有力クラブが次々と活動を停止。それにより選手やスタッフの給与削減など痛みを伴うが、チーム一丸となって感染拡大の防止を図っている。

 Jクラブの中には10日前後のオフを取るクラブもあるものの、練習や試合を実施しているクラブも多い。だがこの非常事態に公式な活動停止の必要性を訴える声は高まっており、全クラブが一斉に停止する“最終手段”でウイルスの脅威に立ち向かおうというわけだ。

 Jリーグの村井満チェアマン(60)は酒井の感染を受けて「新型コロナウイルス感染症拡大阻止に向けた各対策に尽力してまいります」との声明を発表した。Jリーガー初の感染が新型コロナ禍を巡る戦いの分水嶺となりそうだ。