新型コロナウイルス感染拡大の影響により森保ジャパンの“切り札”招集に暗雲が垂れ込めてきた。東京五輪を戦う森保ジャパンは3月の2試合および合宿の中止を決定。6月のフランス遠征も実施が不透明になっている。今後はW杯予選が延期方針になった6月のA代表活動も利用しながら強化を図るが、難題となるのがオーバーエージ(OA)枠。期待される欧州組からの招集は厳しそうで、戦略の再構築は避けられない情勢だ。

 国際サッカー連盟(FIFA)とアジアサッカー連盟(AFC)は、3月と6月に予定されていたW杯アジア2次予選の延期で9日に合意。当該国の合意と両連盟の承認があれば通常通り開催される選択肢も残されているが、発表から一夜明けて都内で取材に応じた日本サッカー協会の田嶋幸三会長(62)は「3月、6月も流れると思っていたほうがいい」と話し、延期は確実な状況だ。

 A代表の公式戦が9月までなくなったことで、兼任の森保一監督(51)は東京五輪に向けてU―23日本代表の指揮に専念できる環境となった。田嶋会長も「5月、6月は五輪を中心にやるのか。いい機会にしたらいい」と言うように、今後はU―23日本代表が出場予定だったトゥーロン国際大会(フランス)、A代表がW杯予選を予定していた6月の国際Aマッチデーをフル活用して東京五輪に向けた強化を図っていくことになる。

 ただ新型コロナウイルスの脅威が、日程の混乱だけでなくチーム編成にも大きな影を落としそうだ。「ただでさえ欧州のクラブは五輪への派遣に消極的だが、今回の影響でさらに(交渉で)かたくなになる。OAならなおさら。日本で一定期間過ごすリスク、移動も極力させたくない。オフの期間は選手を手元に置いておきたいだろう」とJクラブ関係者は指摘する。

 欧州では爆発的に感染者数が増えているイタリアをはじめ、フランス、ドイツ、スペインでも急激に広がっている。感染拡大が悪化の一途をたどる状況に欧州クラブは過敏になっており、五輪世代にあたらないOA選手の派遣に協力する可能性が低くなっているという。

 OA起用が難しくなるのはどの国も一緒だが、強豪撃破のため欧州組で大幅な戦力増を狙っていた日本にとっては特に痛手。手薄なセンターFWは大迫勇也(29=ブレーメン)の招集を見込んでいたが、これがかなわなければ戦略の見直しを余儀なくされる。OAが五輪に協力的なJクラブ限定となれば、森保ジャパンのメダル獲得プランは大きく狂いそうだ。