またも言った、言わないの争いか。新型コロナウイルスの影響で1年延期となった東京五輪について、英BBCは国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(66)がインタビューの中で来年夏に開催されなかった場合は「中止」となる見通しを認めたことを報じた。バッハ会長は、安倍晋三首相(65)から2021年開催が「最後のオプション」と伝えられたことを中止の根拠としているが、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(76)は21日にリモート会見の中で「私はうかがっておりません」と安倍首相の同発言を否定した。

 IOC・バッハ会長と安倍首相が電話会談したのは3月24日。この席で安倍首相は延期を提案し、それをバッハ会長が合意したことで史上初の五輪延期が正式決定した経緯がある。バッハ会長が示唆する安倍首相の「最後のオプション」発言は同会談で出たとされるが、武藤事務総長は「私も同席しておりましたが、最後のオプションという言葉を使ったことは私の記憶にある限り、ありません」と言い切った。

 これまでもIOCと組織委の見解相違はたびたび見られた。先日は追加費用についてIOCが「安倍首相が現行の契約条件に沿って引き続き日本が負担することに同意した」と公式サイトに明示。これに対して組織委は「安倍総理とバッハ会長の電話会談で費用負担について取り上げられた事実はなく、このような形で総理の名前が引用されたことは適切でない」と反論。IOCは当該箇所を削除・訂正した経緯がある。

 一方、バッハ会長が言及した「中止」に関しては、過去に組織委の森喜朗会長(82)も一部メディアのインタビューで同様の意見を述べている。これでIOC、組織委の2大組織のトップが揃って「来年開催できなければ中止」との見解を示したことになるが、武藤事務総長は「どのような文脈で言ったかが大事。森会長は、そのくらいのつもりで準備をしていきたいと強調されたと思います。バッハ会長も1年余り先のことを現時点で議論するのは控えたいと一方で言っております。私の理解ではそういう(中止の)共通認識があるというふうに理解しておりません」と、こちらも否定している。