本当に開催してよかったのか!? 1日に行われた「東京マラソン2020」は大迫傑(28=ナイキ)が自身の持つ日本記録を更新するなど競技こそ無事に終了したが、沿道風景をテレビやネットで見て驚いた人も多かったはずだ。安倍晋三首相が未知のウイルスとの闘いへの協力を呼び掛けた翌日で、大会本部側も応援自粛を要請したにもかかわらず、沿道には7万2000人(東京マラソン財団発表)も詰め掛ける事態に…。感染予防対策も万全だったとは言えない状況で、スポーツ関係者からは“最悪の事態”を危惧する声が上がっている――。

 安倍首相は東京マラソン前日の会見で、「これから1~2週間が、急速な拡大に進むか収束できるかの瀬戸際となり、今からの2週間程度、国内の感染拡大を防止するため、あらゆる手段を尽くすべき」として、改めて大規模イベントの中止や延期を要請。これを受けて多くのイベントが中止となった。

 一方で東京マラソンは約3万8000人の枠があった一般参加こそ取りやめとなったが、多くの批判の中での強行開催。スタート地点の都庁前こそ一般のファンが入れない対策が取られたが、スタートしてからゴールまでの沿道はまるで“無法地帯”だった。

 ランナーに最接近できる給水所付近では、選手が近づくたびにコースに身を乗り出し「ガンバレ~、ガンバレ~!」と大声で連呼するファンがいれば、近くを通り掛かって偶然、応援の列に加わった20代男性は「“お祭り”やってるのに見に行くなっていう方が無理っしょ!」と話す。ノーマスクではしゃぐ人も登場。東京マラソン財団が呼び掛けた「応援自粛要請」は、届いていなかったのが実情だ。

 レース後、同財団の大森文秋事務局長は、新型コロナウイルス感染の拡大が続く状況での開催について「2月17日の段階で規模を縮小する対応(一般ランナーの参加中止)をして、この範囲の中で対応できると考えた」と説明。マスク7万枚、消毒液200リットルを確保して「やるべきことはすべてやった」と開催に踏み切った理由を明かした。

 沿道での応援自粛要請に関しては「大会スタッフの方に『沿道での観戦はお控えください』と、お声掛けするように対応するオペレーションだった」という。

 しかし、テレビ関係者は「沿道に応援自粛を促しているスタッフは見る限り一人もいなかった」と明かし、実際に本紙記者もスタート地点の都庁付近、門前仲町エリア、銀座エリア、丸の内のゴール地点を取材したが、沿道に詰め掛けたファンに声掛けをしている様子は確認できなかった。ましてや、来てしまったファンにマスクが配られることもなく、スタッフに「応援自粛要請」が徹底されていたかという点には大いに疑問符が付く。

 同関係者は「本気で自宅観戦を促したかったのなら、DJポリスを導入し、徹底して沿道からファンを排除するくらいのことが必要だった」と漏らす。

 例年100万人規模のファンが集まることを考えれば、7万2000人で済んだのは成功と言えなくはないが、新型コロナウイルスの感染力の高さを見れば、これだけの数の人々を“集めてしまった”事実は批判されても仕方がないだろう。

 また、「東京マラソンを開催した最大のリスクは別にある」と声を潜めるスポーツ関係者もいる。

「考えたくはないが、もし、東京マラソンに出場した選手から新型コロナウイルス感染者が出てしまったら、東京五輪開催は中止もやむを得なくなる。世界中から日本の感染予防対策に厳しい目が向けられている中で、万全を期して開催したはずの東京マラソンから感染者が出たら、東京五輪出場を辞退する選手や国が続出するのは目に見えている」

 万が一にも東京マラソン出場者から感染者が現れれば、潮目が変わることは必至。多くの人が開催に尽力してきた東京五輪がふっ飛びかねない。ネット上では「2週間後に結果が分かる」との不吉コメントも見られるが、杞憂で終わることを願うばかりだ。