いろいろあったマラソン界、最後に笑ったのは…。8日に行われた東京五輪マラソン男女代表最終選考会の「びわ湖毎日マラソン」と「名古屋ウィメンズマラソン」で、代表各3人が正式に出揃った。女子は一山麻緒(22=ワコール)が2時間20分29秒の日本歴代4位の好記録で設定タイムを突破し、大逆転でラスト1枠を獲得。1日の東京マラソンで日本新記録を樹立した大迫傑(28=ナイキ)に続く感動シーンとなった。本紙はニューヒロインの“素顔”に迫った。
女子マラソン界のラスト・シンデレラは超マイペース!? 一山は1月の大阪国際で松田瑞生(24=ダイハツ)が出した2時間21分47秒を上回る見事な記録で、五輪最後の1枠奪取に成功した。そのアグレッシブな走りとは裏腹な人物像にも注目が集まっている。
ゴール後のインタビューでは「今日みたいな日が来るのが夢だったので、夢みたいです」とコメント。だがその夢舞台については「中学生ぐらいの時に『東京五輪、出たいなー』とボンヤリ思っていた」と、フワッとした思い入れを語った。
何やら大物感が漂うが、その片鱗は6日の会見の際にも見受けられた。報道陣から今大会の位置づけを問われると「位置づけって何ですか?」と逆質問。ロス五輪代表の増田明美さん(56)も「分からないことをすぐに聞ける素直さが素晴らしい」と、そのナチュラルさを大絶賛だ。
一方、トレーニングでは完全な戦闘モードに入るという。一山は所属の永山忠幸監督(60)から課される練習について「鬼メニュー」と表現するが、同監督は「彼女はそう言いながらも、絶対に外さないでやってきた。それが今回の結果につながったと思います」と目を細める。その成果か、一山はきついはずの30キロ過ぎからの独り旅を「ワクワクしていた」と振り返った。
当然五輪でも期待が高まる。アテネ五輪金メダルで2時間19分12秒の日本記録を持ち、一山に国内最高記録(2時間21分18秒)を破られた野口みずきさん(41)は「今回のレースはパーフェクト。本当に力を持っている」とべた褒め。その上で「本番は暑さの中で戦う。(6位だった昨年9月の代表選考レース)MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)は暑かったですから」と本紙に課題を指摘した。
初マラソンで2時間24分33秒の好タイムを出した昨年の東京マラソンも、今回と同じ「寒さと雨」という条件だった。暑い中でも走れるバランスが加われば本当の強さが見えてくるという。「鬼メニュー」とともに、暑熱もペロリとたいらげられるか。