【コロナに負けるな!有名人の緊急事態宣言】世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大で国民生活は一変した。2015年ラグビーW杯イングランド大会の大活躍で国民的スターとなった元日本代表FB五郎丸歩(34=ヤマハ発動機)も例外ではない。一人の人間、そしてトップアスリートとしてかつてない事態をどう受け止めているのか。自身の近況とともに、ポジティブさを失わない“五郎丸の考え”をお伝えする。

 ラグビー界では(史上初のベスト8入りを果たした昨秋の)W杯を終えてラグビーという競技が身近になってきたというときに、トップリーグ(TL)が中止となってしまいました。僕たちの成績も良かった(中止時点で5勝1敗)ですし、こういう問題が起きて非常に寂しいですが、命以上のものはありません。命を最優先していくのが一番なので、こればっかりは仕方ないですね。

 もちろん(新型コロナウイルスの感染拡大が)起きなければ一番ですけど、僕らが普通のことが普通じゃないんだと痛感させられて、いろいろ考えるきっかけになるんじゃないかと思っています。例えばアスリートならスポンサーがいてファンの方がいて成り立っているということを一歩引いた感じで見直す時間ができる。普通なことにありがたさを感じたりすれば、自分のパフォーマンスもコロナがなかったときより上がると思います。

 この状況で個人的にできることは限られてしまいますが、リーグが中止になってしまった中でSNSなどを通じて家でできるトレーニングを紹介したり、取材を受けたりしてラグビーをはじめスポーツの良さを発信していければと思っています。それに自分が企画者というわけではありませんが、チャリティー活動に賛同させてもらってJリーグ磐田との(子供向けの手洗い)動画に参加したりしました。

 個人としては、この状況をネガティブに捉えてしまうより、そういう時間をうまく使おうというふうに考えたほうがいいと思っています。ここはポジティブに捉えて、僕なんかは料理をやったり、(2015年の)W杯があったり海外で過ごした期間があったりして生まれてから息子たちとゆっくり過ごす時間がなかったので、自宅で子供たちとトレーニングをすることもあります。

 圧倒的に息子たちと会話をする時間が増え、こういうことを考えているんだなという発見がたくさんありました。うちの長男は、去年だったかな、習い事の一環でモンゴルに行ったんですよ。1週間ほど、ゲル(遊牧民の移動式住居)で生活して馬に乗って草原を走って羊をさばいて食べたりしましたけど、僕が経験したことのない世界の話を面白く聞かせてもらいましたし、いい経験したんだなと改めて思いましたね。

 チームの活動は現在、全体練習ができないので個人トレーニングが中心。静岡は大都市に比べると感染者が少ないため、チーム施設全部を閉鎖するという措置は取られていませんが、全員が集まるリスクを避けるためにグループに分かれてやっています。午前中はプロ選手、午後から社員選手で妻帯者と独身者を分けたりとか、いろいろ工夫しながらできる限りのトレーニングを続けています。

 終息後、僕らに期待されているのはシンプルにいいプレーをすること。何かしようとか大きいことはあまり考えていなくて、自分が納得できるプレーをみんなに見せることによって、ラグビーの価値が上がると信じています。

【TLカップなどの開催検討も不透明】五郎丸の主戦場TLは、新型コロナウイルス感染拡大の影響などで3月23日に今季の打ち切りが決まった。

 昨年のW杯で日本代表が初の8強入りを果たした効果で、TLの注目度は急上昇した。日本代表キャプテンのリーチ・マイケル(31=東芝)やWTB福岡堅樹(27=パナソニック)、FB松島幸太朗(27=サントリー)ら人気選手の活躍もあり、開幕節から多くの観客を動員。シーズンの3分の1にあたる第5節終了時点で35万人を突破し、目標とする60万人達成が確実視されたが、無念の中止となった。

 また日本選手権も中止が決定し、TLの新シーズンは来年1月開幕を予定していたため、年内のスケジュールも白紙に。今後は、TLカップなどの開催も検討されているが、先行きは不透明だ。稲垣啓太(29=パナソニック)は自身のツイッターに「またラグビーが皆さんの前でできる日が来ることを祈ります。できることを続け、コロナに打ち勝とうぜ」と書き込み、再開を心待ちにしている。

☆ごろうまる・あゆむ 1986年3月1日生まれ。福岡市出身。3歳でラグビーを始め、佐賀工から早大に進学。1年生からFBに定着し、大学選手権優勝3度。在学中の2005年4月16日のウルグアイ戦で日本代表初キャップを獲得し、08年にヤマハ発動機に入った。15年W杯イングランド大会では主力として活躍。日本代表通算57キャップ。711得点は日本代表歴代最多。185センチ、100キロ。