大相撲春場所で大関昇進を決めた関脇朝乃山(26)が、師匠の高砂親方(64=元大関朝潮)から横綱白鵬(35=宮城野)のもとへ出稽古指令を受けた。最大の目標である横綱になるためには、土俵に君臨する“ラスボス”を倒すことは欠かせない要素の一つ。過去に1度だけ行った出稽古ではコテンパンにされているだけに、「KO上等」の決死の覚悟が必要となりそうだ。

「大関朝乃山」の誕生が秒読みに入った。25日に開かれる夏場所(5月10日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議、臨時理事会での承認を経て正式に大関に昇進する。その朝乃山は「横綱に勝てるようにならないと上の番付(横綱)は目指せない。しっかり稽古をして本場所で勝てるようにしたい。常に優勝争いに加われるように頑張りたい」と早くも看板力士としての責任感を口にした。

 最終目標の横綱になるためには、大関の地位で2場所連続優勝(または準ずる成績)を果たす必要がある。最近は横綱が故障で休みがちとはいえ、常に休場してくれるとは限らない。実際、白鵬と鶴竜(34=陸奥)の両横綱が揃った今場所は力の差を見せつけられた。朝乃山が頂点に立つためには、横綱を倒すことが欠かせない要素となる。

 師匠の高砂親方は「多少は(横綱との差が)縮まっているけど、まだまだ。鶴竜には1回勝ったことがある(1勝2敗。不戦勝を除く)。白鵬に勝てない(0勝3敗)のは、立ち合いのうまさ、駆け引きで負けている。そこの部分を研究しないといけない」と課題を指摘。その上で「白鵬のところに出稽古に行って稽古をつけてもらうことも大事。名古屋で1回行ったきり。これからは増やしていくことも必要」と指令を出した。

 朝乃山は昨年7月の名古屋場所前に白鵬のもとへ出稽古を敢行し、コテンパンにされた。最後は強烈な張り手を食らって脳振とうのような症状になりダウン。この“KO劇”がトラウマになったのか、それ以降は宮城野部屋からは足が遠のいている。しかし、本物の実力をつけるためには大横綱に胸を借りるのが近道。元横綱稀勢の里(現荒磯親方)が大関昇進から初優勝と横綱昇進までに時間を要したのは、白鵬との稽古に消極的だったからとも言われている。

 果たして、朝乃山は再び宮城野部屋に足を踏み入れるのか。「KO上等」の覚悟で分厚い壁を突破するしかない。