【「令和」に刻む東京五輪 気になる人をインタビュー】2020年の幕が開き、東京五輪開幕(7月24日)までいよいよ200日を切った。日本選手団の活躍に期待が高まる中で、卓球女子シングルス代表に正式に決まった伊藤美誠(19=スターツ)は、確かな手応えをつかんで大舞台の頂点を狙っている。昨年の選考レースでは「楽しむ」をテーマに掲げ、周囲に惑わされることなく1番手でフィニッシュ。あまりの強さに中国からも「大魔王」と警戒される“無敵の女”が、本紙連載「『令和』に刻む東京五輪」で五輪に臨む胸中を激白だ。

 ――2019年を振り返って

 伊藤:リオ(五輪の選考レース)の時と全然違って1年間楽しくやらせてもらいました。4年前の経験がすごく生かされたと思うし、本当に楽しくできたところが一番。

 ――前回大会とは違う姿勢で臨んだ

 伊藤:いろんな選手のこと(成績やランキング)を考えてしまいがちだけど、自分のことだけを考えてできました。4年前は出場できればいい、団体戦でも出場できればうれしいなと。でも、東京(五輪)は絶対にシングルスで出場したい、1番で出場したいという思いが強かったです。

 ――「楽しむ」とは

 伊藤:試合中、急に楽しくなるんですよ。第1ゲームは少し状態的に沈んでいたとしても、第2ゲームからいいラリーが続いて点数を取り続けると「楽しい!!」という思いになって、だんだん自分のペースに持っていけるんですよね。最初からそうすればいいのに(笑い)。もちろん練習は厳しい。ただやっぱり勝ったり、結果を出していくと厳しい練習も楽しさに変わったり、試合に勝つためにやっているとなると、キツくても楽しめるようになりました。

 ――思い悩んだ時期は

 伊藤:昨年はあまりなかったですね。(4月の)世界選手権はダブルス(準優勝)、ミックス(混合ダブルス=8強)で良かったけど、シングルスが3回戦で負けてしまって。シングルスで戦っている選手を見ると悔しい気持ちになったけど、それは周りの結果が気になっているからなので。世界選手権後に「自分のことだけを」とすごく考えるようになった。

 ――シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3種目に出場して体よりも頭に疲労がたまった

 伊藤:たくさん試合に出ることで体力は勝手につくようになったけど、頭の回転が悪くなったり、頭が疲れるということがありました。でも今では練習期間が1週間なくても、すぐに次の大会への切り替えもうまくいって、これも世界選手権のあたりからかな。卓球選手ってすごく考えることが必要で、試合が終わると頭が痛くなるくらいなんですよ。だから私は頭を使いながらも、どちらかというと考えすぎないように気をつけています。自然体で落ち着いて考える感じですね。良くないときは頭で考えすぎて、体が止まっているので。

 ――五輪に向けて技術面の向上が続く

 伊藤:サーブレシーブは毎日のように練習しています。大会ごとに増やしたり、質を上げたり、分かりづらさを追求したり。中国選手は基礎が強いのでラリーはうまいけど、細かい技術は日本選手が上だと思うんです。日本人特有の手先の器用さで、サーブの回転量、分かりづらさの点では有利になれるのかなと。

 ――かつての武器だった「みまパンチ」(フォアハンドの変則打法)は

 伊藤:最近は機会が少ないというか、もちろん使うときもあるけど、その打ち方だとなかなか体が使いづらいので体を使ったり足を動かす練習もやっています。前はそれしかできなかったけど、今はいろんなことをして、いろんな対応ができるようにしていますね。

 ――限られた時間でどんなリフレッシュを

 伊藤:温泉と魚介類がすごく好きなんですよ。お刺し身とか、アワビのバター焼きとか。海が近くの温泉宿や旅館に行ったりしますね。でも、今はもっともっと休みが欲しい。あと半年頑張って、たくさん楽しみます! よく「普通の19歳ですね」と言われますけど、普通ですよ(笑い)。普通でいたいし、自然でありたいんです。

 ――五輪はシングルス、団体、混合ダブルスの“3冠”も期待される

 伊藤:出る種目全部金メダルを取りたいけど、目の前の試合が大事。一戦一戦勝つことを目標に、実力を全部出し切れば大丈夫という自信をつけたいですね。

【五輪は3度目出場】卓球の東京五輪代表は男子が張本智和(16=木下グループ)、丹羽孝希(25=スヴェンソン)、水谷隼(30=木下グループ)、女子は伊藤、石川佳純(26=全農)、平野美宇(19=日本生命)が決定。伊藤はシングルス、団体戦、混合ダブルス(水谷とのペア)に出場する。また、13日開幕の全日本選手権(大阪)ではシングルス、ダブルス、混合ダブルスで3年連続3冠を目指す。

☆いとう・みま 2000年10月21日生まれ。静岡・磐田市出身。2歳から卓球を始め、13年に平野美宇とのダブルスで臨んだワールドツアー・カタールオープンで史上最年少表彰台。16年リオ五輪では女子団体で卓球史上最年少の15歳300日で銅メダルを獲得。18、19年の全日本選手権はシングルス、ダブルス、混合ダブルスを制し、女子初となる2年連続3冠を達成した。好きなものは洋服、アクセサリー。中国メディアからは「大魔王」と警戒されている。152センチ。