鉄道「踏切事故ゼロ」実現のために必要なこと 踏切ありの時速200km走行と新線建設は可能

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京浜急行線の踏切でトラックと衝突し、脱線した車両の撤去作業=2019年9月6日午後、横浜市神奈川区。この光景を目の当たりにして、鉄道の安全の歴史は事故の歴史という事実を肝に銘じたい(写真:時事)

2019年9月5日昼前、京急の神奈川新町第1踏切にて、警報前から立ち往生(鉄道業界では「トリコ」と呼ばれる)していた13トントラックに、現地の通常走行時速120kmの下り快特が衝突し脱線する大事故が発生した。

京急は、左右のレール間隔が1435mmで国内の多くの鉄道の1067mmより広いが、車体幅が国内の多くの鉄道と同じ2.9m弱なので、走行安定性が高い。

自動車の常識外の行動は防げない

さらに、万が一の踏切事故時に被害を軽減する工夫が2つある。1つ目は、先頭車をモーター付きの重い車両とし脱線・転覆しにくくしていることだ。昭和30年代に都営浅草線・京成線と相互直通運転を始める際は、両社へも同様とすることを強く求めて実行させた。

2つ目は、自動車が横断する全踏切の列車進行出口側にガードレールを設置していることだ。ガードレールは左右レールのそれぞれ内側10cmくらいに設置され、脱線しようとする列車の車輪背面を抑える。近年は同様の設備を持つほかの鉄道もある。

仮に以上3条件を備えていなかったら、もっと大きく脱線・横転していただろう。

今回の事故の第1の原因は、不親切な案内標識により大型トラックが細街路に迷い込み、最後は踏切内で「トリコ」になったことである。鉄道側から自動車側の今回のような行動をなくす即効策はなく、鉄道の万全の安全のためには、自動車が常識外の行動をしても重大事故に至らせない仕組みとしなければいけない。

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