「コロナ失業」冷酷に切り捨てられる人々の叫び 長期自粛のダメージが長く広い範囲に及ぶ

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弱者にしわ寄せが及び、大失業時代が訪れようとしている(デザイン:小林由依、写真:Getty Images)

「私たちはこれまでジムの会員に寄り添って話を聞き、一緒に頑張って手助けするように言われてきました。でも今回の扱いをみると、会社にその精神があるとは到底思えませんでした」

スポーツジム業界の最大手、コナミスポーツでインストラクターとして働く40代の女性は、会見で涙ながらに訴えた。3人の息子を育てるシングルマザーのこの女性は、アルバイトながら、これまで週4日、1日8時間とほぼフルタイムで勤務し、月収にして約20万円を稼いで生活していた。だが、新型コロナウイルス対策として、3月からレッスンが休止され収入が激減。さらに翌月、緊急事態宣言が発令されるとジムは完全に休館となり、女性も休むよう指示された。

休業時の補償を涙ながらに訴える、コナミスポーツで働くシングルマザーの女性(右)(記者撮影)

労働基準法では会社の都合で従業員を休ませる場合、平均賃金の6割以上の休業手当の支払いを義務づけている。ただ女性は休業時の補償について事前に説明を受けていなかった。

不安を覚えて社員であるマネジャーに尋ねると、「緊急事態宣言の要請による施設の使用停止だから、休業手当の支払い義務はない」の一点張りだった。それを聞いた女性は、「今、私たちを見捨てておいて、再開時に生き残っていた人だけまた働こうよ、そう言われたとしか思えません」と憤る。

収入がなくても、家賃や食費、光熱費など3人の子供との生活費は普通にかかる。「仕事柄ケガも多く、子供のためにある程度貯金をしていました。心苦しいけど、今はそれを取り崩して生活しています」という。女性は同僚と個人加盟できる労働組合「総合サポートユニオン」の組合員となり、会社に休業手当の支払いを要請。同社は給与全額の休業手当をアルバイト全員に支給すると発表した。

サービス業で休業者急増

『週刊東洋経済』は6月22日発売号で、「コロナ雇用崩壊」を特集。外出自粛で弱者にシワ寄せが及び、大失業時代が訪れようとしている現実を、多角的に描いている。

このインストラクターの女性のような「休業者」のかつてない増加は、リーマンショック時には見られなかった、今回のコロナ雇用危機の最大の特徴だ。総務省が5月末に発表した4月の労働力調査では、完全失業率は前月比わずか0.1ポイントの上昇にとどまった一方、休業者数は前年同月の177万人から過去最多となる597万人まで、一気に420万人も増加した。リーマン時には就業者の2%強にとどまったのに対し、今回は1割近くが休業していることになる。

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