「THE ANSWER×MLB現地連載 #3」――メジャーリーグ取材から探る「アンサー」
「THE ANSWER」はこのほどメジャーリーグに編集部記者を派遣し、昨季ワールドシリーズを制して世界一に輝いたドジャースを中心に世界最高峰の舞台に密着。「スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト」として普段発信しているスポーツと社会のさまざまな課題、ジュニア育成や進路選び、保護者や監督・コーチの指導のヒント……など「THE ANSWER」のサイトコンセプトに照らしたテーマを、MLBを通して短期連載で発信する。第3回は「無名選手が世界一軍団で地位を確立するまで」。その舞台に辿り着くまでに多くの者が夢破れ、成り立っているMLBの世界。ドジャースの26歳左腕ジャック・ドライヤー投手は学生時代にドラフト指名漏れも経験しながら、世界一軍団のブルペンで地位を確立した。逆境を乗り越えるためのマインドセットを聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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612人が指名された2021年MLBドラフトのリストに「Jack Dreyer」の名前はなかった。
アイオワ大1年目の2018年こそ14試合に登板したが、2年目は肩を手術し、2登板止まり。2020年は新型コロナ禍でシーズンが中止となり、2021年はトミー・ジョン手術で1年を棒に振った。3年間の稼働でわずか20登板、60回2/3、防御率3.41。「ドラフトにかからず少しガッカリしたけど、前を向かないといけない」。“エリートコース”から外れたドライヤーは、座右の銘を思い返していた。
「自分がコントロールできることだけに集中すること」
夢のメジャーの舞台にはたどり着けないかもしれない。「そんな考えは常にあった」。不安になる度に自分に言い聞かせた。「ヘイ、それは自分がコントロールできることじゃないだろ」。邪念を振り払い、目の前のできることに全力を注いだ。
「コロナ禍と手術のせいで、大学で最後に投げた日からプロ初登板まで800日から900日ぐらい間が空いたんだ。できることがあまりない日もある。でも、その全てに100%を尽くしたんだ。毎日、少しだけでも成長できるように、自分がコントロールできることに取り組み続けた」
逆境でもがく若きアスリートへ助言「毎日を決戦の日のように扱うこと」
実戦から遠ざかっていても、地道に磨き上げた投球はスカウトの目に留まっていた。
MLBでは、ドラフト指名されなかった有資格選手はフリーエージェントとなり、全球団と交渉できる。失意の指名漏れから数週間後、朗報が届いた。「ドジャースが最後にいいオファーをくれたんだ。他にも数球団から誘いがあったけど、常に球界トップにいる球団だし、とても興奮したよ」。迷わず契約を決めた。
2021年8月にマイナー契約を結び、2022年6月に初登板。ルーキーリーグで12試合に投げ、防御率1.50と好成績を残した。2年目以降も好投を続け、2024年には順調に3Aまで昇格。だが、MLB公式サイトの有望株ランキングでは、球団トップ30にさえ一度も入らなかった。決して期待値が高かったわけではない。
それでも2025年、開幕ロースターの座を掴み、東京シリーズでメジャーデビューを果たした。
「球団は僕の努力家なところ、賢く、キャリアを考えているところを見てくれたんだと思う。次第にもっと期待してもらえるようになった」。浮き上がるようなフォーシームを武器に、今では複数イニングも任せられる貴重な救援左腕として地位を確立。それでも変わらず、淡々と自分のやるべきことを徹底し続ける。
日本でもドラフト会議で指名漏れが毎年話題になる。夢破れた者は白球を置く選手もいれば、諦めずに大学・社会人、独立リーグ、さらには海外など、別のカテゴリーに進んでチャンスを掴もうとチャレンジを続ける選手もいる。それは野球に限らず、どのスポーツにも共通することだ。
逆境の中でもがく若きアスリートへのアドバイスを求めると「毎日を決戦の日のように扱うこと。プレーしていない時も、怪我している時も、ピッチングする日と同じように着手しなければならない。信念を持って毎日挑戦し続けていれば、良いことが起こる」と返ってきた。
大学時代からMLB入り後も“無名”の存在としてキャリアを過ごしながら、道を切り開いたドライヤー。
小さなことでも、目の前のできること一つひとつに正面から向き合う。その積み重ねの先に、成功が待っている。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)