「もしかしたらラストかも」 巨人ドラ2が“2軍球団”へのレンタルで飛躍 山田龍聖の2か月半「チャンスでしかない」

「必要とされてないの? と思う人もいるかもしれませんが…」

 プロ野球の2軍、ウエスタン・リーグに参加して2年目のくふうハヤテで、エース格の働きを見せている左腕がいる。24歳の山田龍聖投手は6月末までの予定で巨人から派遣され、9試合に先発し2勝2敗、防御率1.79(29日現在)という好成績だ。ドラフト2位でJR東日本から入団して4年目、変わるきっかけはどこにあったのか。史上2人目となる2軍球団への“レンタル”で感じていることを聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部 羽鳥慶太)

 今年3月、山田は巨人からの「くふうハヤテへ行ってほしい」という話に驚きこそしたものの「僕にはチャンスでしかない」と受け取った。2軍球団への“レンタル”制度があるのは、昨季も巨人から木下幹也投手が派遣されていたことで知っていた。1週間ほどで静岡に居を移し、チームに合流した。

「今は必要とされてないの? と思う人もいるかもしれません。でも僕としてはプラスでしかなかった。ジャイアンツで投げるイニングを確保するのって大変なんです。3軍でアマチュア相手に投げても、じゃあ1軍でどうなのかという良し悪しまではなかなかわかりませんし」

 世の中が新型コロナ禍にあった2021年秋のドラフトで、最速153キロの剛球を評価されドラフト2位指名を受けた。社会人からの入団で、もちろん即戦力との期待を背負った。ただ3年目まで1軍登板の機会はなかった。昨年は2軍で29試合に投げ2勝2敗、防御率1.65の好成績を残したものの、オフに待っていたのは育成選手にするという通告だった。

 ただこれも、山田は一つの転機になると受け取ったという。

育成降格で覚悟「もしかしたらラストかもしれないじゃないですか」

「1軍で投げていないので、やっぱり評価しようがないと思うんです。育成になったら、もしかしたらラストかもしれないじゃないですか。そこで逆に、思い切ってできるのかなと思ったんです。それまでの自分は保守的になることが多くて、最悪を想定してやってきたんですね。なので今年はフォームも全然違っていると思います」。開き直りにも近いメンタルと新たな環境が、再び山田を羽ばたかせた。

 ここまでの3年間、苦しいことのほうが多かった。1年目は制球の不安に悩まされた。「もともとそれほどコントロールがいい方ではないですが、軽く投げてもストライクが入らなくなってしまって……。イップスのような感覚もあったと思います」。

 先発のように出力を調整しながら投げるのではなく「最初から全力で投げてみよう」という杉内俊哉コーチの助言で苦境から抜け出すきっかけをつかんだものの、2年目は夏に左肩を痛めてしまった。オフには背番号が28から90へ一気に大きくなった。自分の優先順位がどんどん低くなるのは、感覚でわかる。その中では違う環境でのリセットも、大きな意味を持った。

 昨冬には豪州ウインターリーグに参加。アデレード・ジャイアンツで6試合に先発し1勝2敗。防御率は4.91だったが、25回2/3を投げ、イニングをはるかに上回る43三振を奪った。捕手のサインに首を何度も振り、課題にしていたスライダーやカットボールを投げ続けた。打たれなければ、何が問題かわからない。日々確認と改善を繰り返した。

「オーストラリアでいろいろ試したからこそ、今は勝負に行けていると思うんです」

先輩の曲者から学んだ1軍のすごみ「1回目は抑えても…」

 くふうハヤテでの2か月半で、技術的にも得るものがあった。元日本ハムの中村勝投手コーチには、現役時代に得意にしていたスライダーやカーブの話を聞けた。同僚にはチェンジアップの変化を間近に見せてもらい、磨きをかけた。追い込んでも決め球がなく、投球が苦しくなることが多かったのが、チェンジアップで空振りを取れるケースが増えるなどして内容も変わってきた。

 2軍では上位の力を持っていることは、ここでの実績で証明できた。巨人に帰ってからは、まだ見ぬ1軍マウンドが大目標となる。くふうハヤテでも、そこで何が必要なのか、イメージしながらの投球が続く。そこで山田は意外な選手に、1軍の凄みを教えられた。

 JR東日本の先輩にも当たる、オリックスの小兵・西野真弘内野手だ。5月に2度続けてオリックス戦で投げる機会があった。最初の試合で西野がフライを打ち上げているのを見て、これなら次も、高めの直球で抑えられると思った。

 ところが2度目に対戦した西野は、全くバッティングを変えていた。山田の攻めを読み切っていたのか「かぶせて打ってきたんです」。手痛い適時打を浴びた。後日あいさつに行った時に、狙って打撃を変えたのか聞くと「そうだよ」と教えられた。「1軍の選手は、1回目は抑えても2回目は入り方から変えてくる。駆け引きですよね……」。その場に入っていくための心の準備も進んでいる。

 2軍球団でプレーすることで、巨人の恵まれた環境に感謝の念は強くなった。大阪まで5時間を超えるバス移動も「確かにコンディションニングは難しくはなりますけど、1軍に行ったら遠距離の移動もある。その練習になると思っています」。巨人に戻る日はもうすぐ。念願の1軍へ扉は開くか。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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