3度の指名漏れで「チャンスは今しか」 超有名企業退社し“2軍球団”へ…野口泰司が新天地で狙うキャラ変

社会人日本代表も経験した24歳がくふうハヤテ入りのワケ

 プロ野球の2軍ウエスタン・リーグに参加しているくふうハヤテに5月、意外な新入団選手が加入した。昨季まで社会人野球のNTT東日本でプレーし、日本代表にも選出された野口泰司捕手だ。栄徳高(愛知)、名城大(同)時代からドラフト候補と呼ばれ続けてきたが、社会人で指名解禁となった昨秋も朗報はもたらされなかった。4度目のチャンスに賭ける今年、なぜ2軍球団へやってきたのか。決断の裏側を聞いた。

「裏の話は分かりませんけど……。指名するかもという話までで、指名するという話はどこからもなかったんです」

 野口は3度目のドラフト指名漏れとなった昨秋の状況をこう振り返る。社会人球界屈指の捕手として全国大会出場はもちろん、日本代表にまで選ばれた。入社から2シーズンを終え、3度目のドラフト対象となったが失意を味わった。そこで新たなシーズン直前に選んだのが、新天地への移籍。3月いっぱいでNTTを退社すると、4月のトライアウトを経てくふうハヤテにやってきた。

「とにかく上を目指したい。まずは2軍でプレーして、上に上がっていきたい。野球人生の中で、やれるチャンスは今しかない。今がベストコンディションだと思っているので、試してみたい」という強い意志が、思い切った行動へと踏み切らせた。

 近年、野口のような選択をする選手は増えつつある。昨秋のドラフトでソフトバンクから育成3巡目指名を受けた大友宗捕手は、帝京大から日本通運へ進んだのち2年で退社。1年間BCリーグの茨城でプレーして夢をつかんだ。昨季イースタン・リーグで首位打者と最多安打の2冠に輝いた知念大成外野手(オイシックス)も、沖縄電力を退社して2軍球団へ飛び込んだ。どんな変化が生んだ現象なのだろうか。

学生でなくなっても広がるプレーの選択肢…選手の価値観も変化

 学生生活を終えた後も野球を続ける場はかつて、社会人野球しかなかった。それが四国アイランドリーグやBCリーグなどの独立リーグが誕生して約20年になる。昨季からはくふうハヤテ、オイシックスと2軍リーグだけに参加し、ドラフトで選手をNPB球団に送り込もうとする球団も誕生。学生時代に花開くことはできなかった、遅咲きの選手がプレーする場が広がった。

 もちろん現在も、企業チームの選手はプロ入りの適齢期を過ぎると何年かプレーを続け、その後は社業に就くのが主流だ。リーダーシップを活かすなどして、大企業で出世した例も数多い。ただ現在の若い世代に、一つの会社で勤め上げることが美徳という価値観はないに等しい。これは何も、野球選手に限ったことではない。

 野口も「会社に残ることはもちろん、将来的に安定はするんですけど、僕の夢としたらプロ野球選手になることが一番。今安定しても……と感じたのはあります。まだチャレンジしたいという感覚ですね」と、将来的な安定を第一義に置いての進路選択ではないと説明する。

 大卒3年目の24歳。年齢的なリミットが近いのはわかっている。「プロを目指せるのも、大学出て2年、3年目くらいまでだと思うんです」と、今季に賭ける思いは強い。欲したのは、プロを真剣に目指す選手が集まる環境だった。

「プロに本当に行きたいとか、1軍でプレーしたいとかっていう目標を持ってたりする選手ばかりなので、考え方は本当に共通する部分がある。個人の成績も出さないといけないので」。社会人野球は会社のために、チームが勝つのが第一。2軍球団ではそれに加え、個人のアピールも必要になる。方向性の違いがあるという。

「行けると思っていましたよ」大学4年時の指名漏れはなぜ?

 ただ、シーズン中に入団した捕手がポジションを勝ち取る難易度は、他のポジションよりも高い。投手をよく知り、呼吸をすでに合わせている選手の方が起用されやすいからだ。5月からのくふうハヤテ入りを選んだ野口もこれについては「相当に難しいとは思っています。ただ信頼を勝ち取る捕手になるのは、どこに行っても必要なこと」と厳しい表情。不利は承知の上だ。

 新天地で、自分のキャラクターを作り直したいという意図もある。学生時代から強打の捕手として注目された。NTT東日本でも4番に座り、一塁や指名打者で起用されることもあった。「打てる捕手ってやっぱり少ないじゃないですか。そういう見られ方をしているのもわかりましたし、その中で守備とどう両立するんだというところをやってきました。でもここでは、バッティングキャラの印象を変えたいんです」と言う。

「実際には守備の方が自信はあって。4番打ってるからキャッチャー(の守備)が疎かになるんじゃないかという見方もあると思うんですよ。そこを払拭したいなと思ってやっています」。1.8秒がプロレベルの基準となる二塁送球タイムでも、最速は1.68秒。しっかり守れることを見せて、次のステージへ進みたいという。

 名城大4年で迎えた2022年のドラフト。支配下指名であれば何位でも入団するつもりだった。メディアにも上位候補の文字が踊る中で、まさかの指名漏れ。「(プロへ)行けるとは思っていましたよ。まさか、どこもないとはと……」。当時は「大学日本代表で怪我をしてしまい、ちょっとうまく投げられない状態が続いたりして、そこの印象が本当に悪かったのかな」と自己分析していた。2軍球団で捕手としての自分に立ち返り、4度目のチャンスを生かす。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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