バイクの性能を見る上でハズせないのが「最高出力」ではないでしょうか。バイク談義や雑誌などの記事を見ると「○○馬力」や「○○PS」と表現するのが一般的ですが、スペック表を見ると「kW」が主体で表記され、「PS」はオマケのように書かれています。一体ナゼでしょう?
「kW」は軽量法で定めた国際的な単位
バイクのカタログやメーカーのホームページのスペック表で「最高出力」の欄を見ると、「○○kW[PS]/rpm」という具合に表記されています。なぜ2種類の数値(単位)が書かれているのでしょうか? そして何が違うのでしょうか?
じつは、「kW(キロワット)」は国際単位系で出力を表す「SI単位」で、「PS(ピーエス)」は馬力(正確には仏馬力)を表しています。
1999年に日本の計量法が改正されてからは、バイクやクルマの最高出力はSI単位で表記しなければならなくなったのです。
本来なら以前のPS表記は不要ですが、既存モデルとの性能比較などで解りやすくするために、[ ]書きで以前の単位を併記することが許容されているのです。
たとえばホンダ「CB1300スーパーフォア」の1999年モデルと2000年モデルは、カラー変更のみのマイナーチェンジで諸元の変更はありません。それぞれのスペック表の最高出力の欄を見ると、1999年モデルは100PSの表記で、2000年モデルは74kWと100PSを併記しています。
もし2000年モデルが74kWしか表記していなかったら、最高出力が同じなのか、それとも変わったのか判断しにくいでしょう。
馬力の「PS」と「HP」は、数値が異なる!?
物事を測る単位は統一した方が良いのは理解できますが、最高出力は長く親しんできた「PS」の方が分かりやすいのでは……と感じるのも事実です。ところが、馬力の単位は世界共通ではありません。
現在、世界的な基準になっている国際単位系のSI単位は、長さの単位であるメートル(m)、質量の単位であるキログラム(kg)、時間の単位である秒(s)の組み合わせによって、様々な物理量を表現しています。
しかし馬力は、「Horse Power(馬の力)」を略した「HP」という単位から始まり、英国や米国で使われましたが、英米は長さや質量に「ヤード・ポンド法」を用いていました。
そこで国際単位系の前身となる「メートル法」を用いて馬力=PSを再定義すると、1PS=0.99HP(1HP=1.01PS)と、微妙に変わってしまいました。
ちなみにPSはドイツ語で馬力を表す「Pferdestarke」を略したものですが、フランスがメートル法の発祥の地であることから「PS=仏馬力」と呼んでいます。ここは少しややこしいですね。
というワケで、馬力を表すPSとHPでも正確に比較することができません。そこでグローバルな視点からもSI単位の「kW」に統一することになったのです。
ちなみに、「1kW=1.36PS」(1PS=0.74kW)になります。
他にも、トルクや圧力の単位もSI単位が使われるようになったため、スペック表ではエンジンの最大トルクの表記が変わったり、メンテナンスや整備作業ではタイヤの空気圧やボルトの締め付けトルクの表記(呼び方)も変わっています。
EVバイクは「定格出力kW」が重要!
日本でバイクやクルマ関係でSI単位が使われるようになってすでに4半世紀ほど経ちますが、いまだに昔の単位での呼び方が一般的だったりします。
キャリアの長い人ほど昔の単位に馴染んでいるので、たとえばホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」(現時点で国内最大パワーの218PS)が「最高出力160kW」と言われても、ピンとこないのが実情でしょう。
とはいえ今後は、意外と早く「kW」が広まるかもしれません。それはEVバイクの存在です。
EVバイクは従来のエンジン(内燃機関:ICE)のような排気量ではなく、電動モーターの定格出力(kW)によって運転免許の区分(道路交通法)や車両の区分(道路運送車両法)が決まります。
この先、コミューター類だけでなくカワサキの「Ninja e-1」のようなEVスポーツバイクが増えてくれば、もちろん最高出力は気になるところで、バイク選びや購入の際には定格出力(kW)がかなり重要になってきます。
また、このところ「新基準原付」が話題になっており、原付免許で最高出力4kW以下に制御した排気量125cc以下のバイクを運転できるということになりました。
こちらも最高出力(kW)が運転免許や車両区分に大きく関係しています。
このような状況が増えてくれば、おのずと「kW」が身近になってくる……かもしれません。