映画『か「」く「」し「」ご「」と「』奥平大兼さんインタビュー 人の気持ちが見える高校生の青春、自然体で演じる

『君の膵臓をたべたい』などで知られる作家・住野よるさんの青春小説『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫)が実写映画化し、5月30日から公開されます。“少しだけ人の気持ちが見えてしまう”という特別な「チカラ」をそれぞれ隠し持つ高校生の男女5人の、もどかしくも切ない日々を描いた本作で、引っ込み思案で自分に自信が持てない大塚京を演じた奥平大兼さんに、原作を読んだ感想や、演じた役と自身の似ているところなどについて聞きました。(文:根津香菜子 写真:松嶋愛)

あらすじ

「自分なんて」と引け目を感じている高校生・京(奥平大兼)は、ヒロインじゃなくてヒーローになりたいクラスの人気者、三木(出口夏希)が気になって仕方がない。三木の親友で予測不能な言動でつかめない存在の黒田文・通称パラ(菊池日菜子)と、明るく楽しそうにしている彼女を、いつも遠くから見つめるだけ。卒業するその日まで、三木の幼なじみで京の親友の高崎博文・通称ヅカ(佐野晶哉)を通じて“友達の友達”として一緒にいるはずだった。ある日、内気な性格の宮里・通称エル(早瀬憩)が学校に来なくなったことをきっかけに、5人の想いが動き出す。

(C)2025『か「」く「」し「」ご「」と「』製作委員会 (C)2017住野よる/新潮社

実体験と重なるストーリーと役どころ

――本作は、少しだけ特別な「チカラ」をもっている5人それぞれの「かくしごと」が織りなす物語ですが、原作はどのタイミングで読みましたか?

 京役のお話をいただいて、台本よりも先に原作を読みました。高校生たちの物語ということで、自分の世代と近い人たちのお話だったので、すごく分かりやすかったです。特にいいなと思ったのが、登場人物それぞれの気持ちの描き方や、「こういうことって実際にもあるよな」と思うところですね。あとは、人間関係の少し複雑な部分も描かれているので、学生の時にクラスメイトや仲間内の空気を読んで「自分はどうするか」を考えることは自分の実体験でもありましたし、周りの人たちを見ていて思っていたことがストレートに描かれていたので、スッと入ってきた感じでした。

――最初にこのタイトルを見たとき、どんなことを思いましたか。

 まず原作の表紙を見た時に、制服を着た5人の絵がパッと目についたんです。それを見て「きっとそれぞれが何かを隠しているのかな」と思いました。大人になってからもそうですが、特に学生の頃は自分の気持ちを隠したり、言えなかったりすることってたくさんあると思うので「言えないことを抱えているんだろうな」と想像しながら本を読みました。

――製作陣がキャスティングで最も悩んだのが、奥平さん演じる京だったと聞きました。
わかりやすい人気者やヒーローではないものの、不思議な存在感のある役どころでしたが、「京」という役をどのようにつかみ、アプローチしていったのでしょうか。

 今回はあまり役作りをしたという感覚はなくて、そのままでいただけ、というのが正直なところです。もちろん、本に描かれている「京」がいるので、そこは大切にしないとと思いつつ、あまり原作の京にとらわれすぎると作られたものになってしまうし、多分この物語はそういう感情がいちばん敵だと思ったので、そこは割り切ってやっていました。

――「実は自分の中に京くんのような一面もある」とのことですが、具体的にどんなところでしょうか。

 京と似ていると思うところはないのですが、ちょっと近しいなと感じる部分だと、感覚的なところですね。京は思考回路が少し独特で、極端にネガティブにとらえていくタイプなのですが、「こういう受け取り方や考え方をすることってあるな」というところは共感できました。

自分の感覚として理解できた

――作中では京のモノローグも多かったですが、語りで意識されたところはありますか。 

 モノローグのパートは何回か録ったのですが、自分の中では「あまりモノローグっぽくしないようにしよう」と思っていました。モノローグって説明的なことが多いけど、今回は割と感情的な部分が出るセリフが多かったので、そこは京が話している感じでやりました。

――相手や周りのことを考えすぎて飲み込んでしまう、「僕なんか」と自分のことを過小評価しすぎている京の気持ちをどう理解し、表現しようと試みましたか?

 それも普通にあることだなと思いました。京のもどかしいところも、特別「こうだろうな」と考えて気持ちを作ったことはなかったですし、自分の感覚として理解できましたね。きっとほかの4人も同じだったと思います。それぞれのキャラクターが割と自分自身に近い感じで、自然にできていたと思いますし、僕に京の感覚がなかったら、今回の役を演じるのはかなり大変だったんじゃないかなと思います。

相手の気持ちが見えてしまったら?

――人の気持ちが少しだけ見える「チカラ」を持った5人ですが、もしご自身にそんな「チカラ」があったらどう思いますか?

 相手の気持ちや感情が見えてしまったら、きっと変にとらえて考えすぎる材料になってしまうだろうし、人との接し方も変わる気がします。もしかしたら、そのおかげで何か便利なことも起きるかもしれないけど、僕はその能力があったら嫌ですね。

――ご自身が表現する、口にして伝えることが難しいと思う感情はなんでしょうか。

 自分が今「嫌だよ」と思っていることですかね。その場の空気を考えると「今はそれを言うタイミングじゃないな」と思うことはたくさんあるので、本当は嫌だけど我慢していることはよくあります。だからといってそれが不満というわけではないし、なくなってほしいとも思わないです。

会話しているように書く日記

――Instagramでは、たまに日記を投稿されていますよね。長文が多いですが、時間をかけて文章を書くタイプですか?

 特に悩むこともなく、いつも下書きもしないで1回で書いているので、結構しゃべり口調になっていることが多いんです。頭の中で、特定ではない「誰か」と会話しているような、独り言みたいな感じで書いているだけなので、それを読んでくれている人がいるのは嬉しいですが、ちょっと恥ずかしいなと思う時もあります。誤字がないように、一応マネージャーさんに添削してもらっているのですが、結構な割合で誤字があります (苦笑)。

――今回の作品でいうと、撮影で水族館に行った時のことを書いた日もありましたね。

 チンアナゴの写真を載せた時ですね(笑)。水族館は単純に僕が行きたかった場所だったので、喜びが大きすぎて珍しく文章もテンションが上がりました。水族館のシーンはこの作品の中でも割と重要で、みんなで行っているのに、割とバラバラになることもあるんです。例えば、ヅカがトイレに行っている間、パラとエルが「コウイカ」の不憫さが京に似ていると話しているシーンは、普段5人でいる時とはどこか違う雰囲気で、いつものメンバーで集まっているシーンとの差があって。同じ場所にいるのに、そこでいろいろなことが起きていると考えると面白いシーンだなと思います。

 

――今作は小説が原作でしたが、普段はどんな本を読みますか?

 絵画やクラシックが好きなので、自分の趣味に関しての本を読むことが多いです。特に、様々な音楽家たちがこれまでどういうことをして、どのタイミングでどんな曲を作ったのか、といった半生が書いてある伝記のような本があるんです。200年以上前に亡くなった人たちがどういう生活をしていたのかということが書かれているのですが、その時代の風景や文化が見えてくるのが面白いんですよね。人によっては知らなくてもいいようなことかもしれないけど、知る方が面白みも深まるし、知識があると一層楽しめることもあるんだなと思いました。

「そういう人が実在した」というところにも興味を惹かれます。もちろん物語にもその良さがあると思いますが、作曲家や画家の中には、絵に描いたような話の人生を送っている人もいるので、時代と文化が違うと、これだけ人は変わるものなんだなと思いました。

お話を聞いた人奥平大兼(おくだいら・だいけん)

2003年生まれ、東京都出身。2020年に「MOTHER マザー」でスクリーンデビューし、数々の映画賞で新人賞を受賞。近年の出演作に、映画「マイスモールランド」、「君は放課後インソムニア」、「Cloud クラウド」、日曜劇場ドラマ「御上先生」(TBS)など。待機作に、8月15日公開の映画「雪風 YUKIKAZE」がある。

インフォメーション『か「」く「」し「」ご「」と「』

5月30日(金)公開。中川駿監督・脚本。住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫)原作。奥平大兼、出口夏希、佐野晶哉、菊池日菜子、早瀬憩ら出演。
公式サイト:
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(C)2025『か「」く「」し「」ご「」と「』製作委員会 (C)2017住野よる/新潮社

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