幼稚園の教諭として日々子どもたちと向き合う中、ある日経験した出来事が、私の保育観を大きく変えました。体調を崩した子と、その周囲の子どもたちの反応、そして担任の先生の一言。その“思いやり”がもたらした結果に、私は深く考えさせられたのです。友人が、体験談を語ってくれました。
体調を崩した園児と、教室のささやかな異変
私は幼稚園で働く教諭です。
ある日、年中クラスのAくんがいつも通り元気に登園してきました。
朝の自由遊びの時間も活発に動き回っていて、特に気になる様子はありませんでした。
けれど、お昼ごろになるとAくんの様子が急変。顔が赤くなり、しきりにゴホゴホと咳をし始めました。体もだるそうで、「少ししんどい……」と訴えてきたのです。
善意がもたらした、予期せぬ出来事
担任の経験豊富な先生が保護者に連絡を取り、早退の調整を始めていたその時のことです。
周りの子どもたちも、Aくんの体調に気づき始めていました。
中でもBちゃんは「Aくん、大丈夫?」と心配しながらも、そっと自分の席をずらしました。
その行動を見た担任の先生は思わず、「咳してるからって離れないの! いじわるしない!」と注意し、BちゃんをAくんの隣にピッタリと戻してしまったのです。
担任の先生は、「仲間外れにしない」という気持ちからだったと思います。でも、私はその場でなんとも言えない違和感を抱いていました。
インフルエンザの連鎖
Aくんがインフルエンザだと診断されたその数日後。
Bちゃんが欠席し、保護者から「インフルエンザでした」との連絡が。
もちろん、感染経路を特定することはできません。でも、あの日のやりとりが頭から離れませんでした。
“思いやり”のつもりだった行動が、結果的に子どもの健康を脅かしてしまったかもしれない。
保育に求められる、心と体の両方への配慮
保育現場では、「心を守ること」と「体を守ること」の両方が求められます。どちらか一方だけでは不十分。だからこそ、慎重に判断しなければと強く思いました。
「距離を取る=冷たい」ではなく、「今はそれが優しさ」なんだと。
あの出来事を通して、私自身の保育観も大きく揺さぶられたのです。
【体験者:20代・幼稚園教諭、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。