夫婦といえど、価値観のズレやすれ違いは避けられないもの。時にはそれが原因で夫婦関係が破綻してしまうこともあるでしょう。今回はそんな夫婦の危機を思わぬ形で乗り越えた、筆者の友人のエピソードをお届けします。
すれ違いの日々と決意
結婚して5年。私は離婚を決意しました。
夫は朝から晩まで仕事漬けで、家事や育児といった家庭のことはほとんど私任せ。
「少しは手伝って」と何度伝えても、「仕事が忙しいんだ」と取り合ってもらえませんでした。
話し合いを重ねても、すれ違うばかり。
このままではもう無理だと悟り、ついに離婚へ向けてお互い弁護士に相談することになったのです。
待合室での“まさか”の遭遇
予約した日、弁護士事務所の待合室に入り、緊張したまま席についた私。
ふと扉が開いた瞬間、思わず息を呑みました。
入ってきたのは、なんと夫だったのです!
一瞬、夫の目も見開かれ、空気が凍りつきました。
沈黙を破って、夫がポツリと口を開きました。
「……家事も育児も、全部1人でやらせて悪かった。でも、仕事も本当に大変なんだ。少しは分かってほしい」
私は言いました。
「私だって毎日ギリギリなの。1人で全部抱えるのは、もう限界」
それは、お互いにこれまで口にできなかった本音でした。
弁護士の言葉
やがて私の番になり、弁護士にこれまでの経緯を説明しました。
弁護士はうなずきながら熱心に聞いた後、静かにこう言いました。
「離婚は、人生の大きな分岐点です。お子さんや将来のことを、もう一度じっくり考えてみてください。今の話を聞くかぎり、お互いに相手を嫌いになったわけではないように感じます。本当に大切なものが何か、ご主人と話してみる価値はあるかもしれませんね」
その言葉に、ハッとさせられました。
たしかに、私は自分の辛さを分かってほしい一心で、夫の気持ちをきちんと聞いてこなかったのかもしれません。
偶然がくれた、2人の再出発
面談を終えて待合室に戻ると、夫はまだそこにいました。
そして私の顔を見ると、少し照れくさそうに声をかけてきたのです。
「こんな偶然、そうそうないよな……もう1回、ちゃんと話してみないか?」
私たちは近くのカフェに入り、素直な気持ちをぶつけ合いました。
夫は、仕事で重い責任を背負っていたこと、私がそこまで限界だったと気づいていなかったことを語り、謝ってくれました。
私も、自分ばかりが我慢していたつもりだったけれど、夫なりの必死さに思いが至らなかったことを反省。
結局、私たちは離婚をやめて、もう1度やり直すことを決意したのです。
最悪の偶然だと思った出来事が、私たち夫婦をつなぐ“最良のきっかけ”になりました。
今では、あの日の偶然に感謝しています。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。