福井県福井市長橋町の日本海に面した越前海岸の斜面に広がる水田風景を復活させようと、製塩所を営む志野佑介さん(41)が、地域住民や仲間らとともに奮闘している。約1年をかけて進めてきた地権者との契約や耕作放棄地の再生などが終わった一部の水田で5月に田植えを迎えた。今後約6・7ヘクタール、40枚ほどある水田を全て修復し「価値ある農地とその風景を次の世代の子どもたちにつなぎたい」と描く。
志野さんは、2019年に千葉県から同市南菅生町に移住し、鮎川町で製塩所を立ち上げた。当時、水分神社前の斜面の水田と、その先の日本海の風景に魅了された。しかし、年々耕作放棄地が増えていった。長橋町自治会長の堀豊明さんによると、10年ほど前から米作りをやめる人が増え、23年には1人になったという。
「最初に見た景色を地域の子どもに残したい」と奮起した志野さんは昨年2月、地権者約40人に土地を貸してほしいと訴えた。「途中で投げ出さず本当にできるのか」「やってくれてありがたい」。反応はさまざまだったが、堀さんも町内の役員会で地権者らに協力を求めるなど支援してくれ、多くの地権者から借り受けることになった。
長い間放置された田では背丈ほどに茂った草木を刈ることから始めた。昔の地図から水路を探し当て、イノシシに荒らされた箇所も修復した。急傾斜地のあぜの管理には除草ロボットを導入。「ジムに行くなら草刈りをして体を鍛えよう」を合言葉に、交流サイト(SNS)で協力してくれる人を募る「グリーンジム」と題した試みも始めた。
今年は約2ヘクタール、14枚の水田に水を張った。どうしても水田に水がたまらず、計画通りにいかない事も多く、トラクターなど農機の導入費用を考えると、採算が取れるのはまだ先になりそうという。それでも志野さんは「鷹巣地区で米を作るのは75歳以上がほとんど。進み行く過疎の中でも、地域の資源を残して活用したい」と前を見つめている。