パシフィコ横浜で2025年5月21日から23日にかけて開催された「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」には、クルマに関わるメーカーやサプライヤーなどが数多く出展しました。今回は、会場で気になった市光工業およびトヨタ車体、三菱ケミカルのブースについて紹介します。
路面に記号を描画できる
公益社団法人自動車技術会が主催する「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(通称:人テク)が、2025年5月21日から23日の3日間にわたってパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催されました。最新技術や製品を世界に向けて発信することを目的とした、自動車技術における国内最大の展示会で、617社が出展。そのなかから今回は、市光工業とトヨタ車体、三菱ケミカルのブースについて紹介します。
自動車用ランプを手掛ける市光工業は、進化したヘッドランプやウインカーを展示。周囲の安全に配慮した“光らせ方”を模索しています。
「HDライティング」は、ヘッドランプの照射範囲を数万ピクセルに分割して個別に制御する技術です。対向車のヘッドランプ(ハイビーム)がまぶしいといった場面で、相手方の目に照射される範囲のみ減光するといった具合に、細かい制御が可能です。
また、ロービーム照射範囲のみ高解像度化することで、記号などを路面描画できるといいます。これはナビゲーションの際、レーンガイドなどを路面に投射することで、ドライバーのサポートに寄与します。
これをウインカーに応用し、点滅を記号として路面に照射することで、歩行者などに注意を促すことも検討されています。特に見通しの悪い交差点や走行音の静かな電気自動車で効果を発揮するほか、近年社会問題にもなっている歩きスマホで視線が下に行きがちな歩行者へも、車両の接近を知らせることができます。
ランプで後続車へメッセージ!?
光源にLED(発光ダイオード)が用いられるようになって久しいなか、クルマの“顔”を形作ってきたランプ類は小型化しています。こうなると、ランプで特徴を出すのが難しくなっていき、どのメーカーのクルマも似たような顔になりがちです。
市光工業は224個のLEDを用いたフロントライティングを開発し、これは256色を表示できるとのこと。例えばリモートキーでロック解除した際に、カラフルで流れるようなアニメーションを表示することで、オーナーを楽しませることもできます。
リアライティングにも先進的なLEDが用いられています。発光エリアを分割したパネルと調光制御と組み合わせることで、自由度の高い光の演出が可能となり、例えば後続車へ簡単なメッセージを表示することもできます。
市光工業は、ランプを通じてより安全・安心な交通社会の実現を目指したいとしています。ただし、いずれの点灯や表示も、日本においては光の色や照度といった観点で、法律の壁をクリアする必要があるそうです。
木でできたクルマは「一石三鳥」!?
トヨタ自動車のグループ会社であり、ミニバンやSUVなどを製造するトヨタ車体は、材料の一部に木を用いたクルマを展示。超小型BEV(バッテリー電気自動車)であるそれは、「PLANT COM もくまる」という名称です。
「もくまる」に使われているのは、スギの間伐材を配合した樹脂素材「TABWD(タブウッド:Toyota Auto Body WooD)」です。車体全体に使われているのではなく、フォグランプブラケットやバッテリーキャリアなどのパーツに採用されています。
植物由来の材料を使うことで、カーボンニュートラルを実現できるほか、間伐材を用いることで、数多く植樹されてきたスギの間伐を促進でき、森林の豊かな循環を生み出せるとしています。なお「TABWD」は繰り返し使用することができ(サーキュラーエコノミー)、また木でありつつも燃えにくい加工も可能だといいます。
間伐材には静岡、高知、鹿児島県産の木材が利用されています。これらはトヨタ車体の研究所や、共同研究を行っている各機関と縁のある自治体だそうです。
ちなみに「TABWD」は、前出のとおりカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーに寄与しますが、加えてスギを用いる点から花粉症対策にもなり、「一石三鳥」といえるかもしれません。
分子レベルで分解「ケミカルリサイクル」
廃車となったクルマをリサイクルして、パーツとしてよみがえらせる企業もありました。
三菱ケミカルグループの日本ポリプロは、三菱ケミカルのブース内に、環境負荷低減ポリプロピレン「NOVAORBIS(TM)」(ノバオルビス)を用いた製品を展示。ポリプロピレンとは軽量かつ耐熱性に優れた樹脂素材です。
廃車体から取り出されたプラスチックを原料に、それを加工し再利用するマテリアルリサイクルと、化学的処理を施し、それを原料に製品を作り出すケミカルマテリアルを通じ、ドアトリムなどの内装材を手掛けています。
従来、リサイクル品はVOC(揮発性有機化合物)や臭気といった観点から、主にバンパーなど外装材として用いられてきました。日本ポリプロは独自の技術で内装材にも使えるようにし、このたび広島県内に本社を置くKGモーターズの小型モビリティロボット「mibot(R)」の内装材に初めて採用されました。「持続可能な移動」を実現したいという両社の思いが合致してのことです。
特殊な加工は必要なく、パーツ特有の湾曲なども生成できます。マテリアルリサイクル品は2024年度に販売が開始されており、ケミカルリサイクル品も2025年度中の発売を計画しているといいます。
日本ポリプロは、茨城県内において新プラントの建設を終えており、2025年5月時点で稼働へ向けた試運転を実施しているとのことです。