複数回にわたりリメイクされた
「男装の麗人」が活躍して、昭和の少女たちの瞳をキラキラに輝かせたTVアニメといえば、1967年から翌68年まで放送された『リボンの騎士』(フジテレビ系 全52話)です。主人公の「サファイア」は、天使「チンク」のいたずらで、男と女、ふたつの心を持って生まれた「シルバーランド」の王女様でした。男にしか王位継承権がないという法律のもと、王子として生きなければならないサファイアの姿に、子供たちは幼いながらに、苦しさ、けなげさ、凜とした美しさを感じたことでしょう。
原作は「マンガの神様」こと手塚治虫先生が雑誌「少女クラブ」に連載(1953年〜1956年)した作品で、日本のストーリー少女マンガ第1号でした。兵庫県宝塚市で育ち、宝塚歌劇団に出入りして親しくしていた手塚先生が「女の子に人気の歌劇団を漫画におきかえてみたらどうだろう」と描いた作品で、「宝塚歌劇調のコスチュームプレーが漫画で十分表現できる」と考えたのだそうです。
アニメ化は往々にして、原作とは異なる部分があるものですが、この『リボンの騎士』の場合はどうでしょう。調べてみると、意外なことが分かりました。
まずは『リボンの騎士』と名のつくマンガは4作もあるという事実です。前述のように最初に描かれたのは「少女クラブ」版ですが、その後リメイクして、サファイアに降りかかる危機や困難を激増させたハラハラドキドキバージョンの「なかよし」版(1963年〜1966年)があります。
さらに、サファイアの双子の息子と娘の物語を描いた続編版(1958年〜1959年まで「なかよし」連載。単行本化の際に『双子の騎士』に改題)、サファイアの子孫がタイムマシンで会いに来るSF版(「少女フレンド」1967年に連載)まで、同タイトルで発表されていたのです。
アニメの原作は、一般的に「なかよし」版とされているとのことで比べてみたところ、最終回だけをとってもまったく異なります。サファイアと隣国の王子「フランツ」が結ばれるという結末だけは同じものの、アニメではアニメオリジナルキャラの「X」なる人物が率いるX軍との死闘の末に、原作ではフランツに横恋慕した女神「ビーナス」との攻防の末に、とシチュエーションも意味も違うのです。
また、アニメには「白雪姫」「王子と乞食」「浦島太郎」などのおとぎ話をモチーフとした回も組み込まれていました。子供たちに親しまれやすいように、という思いからだったのかもしれませんが、これも原作とは大きく異なる点でした。
『リボンの騎士』とは「サファイア」という存在さえあれば、どんなアレンジを加えても成立してしまう作品なのかもしれません。『リボンの騎士』はこれまでミュージカルでも演じられており、高橋愛さんがサファイアを演じた「モーニング娘。」の舞台や、生田絵梨花さんがサファイアを務めた「なかよし60周年記念公演ミュージカル」などがあります。
しかし、残念ながら、手塚先生がインスピレーションを得た宝塚歌劇団ではいまもなお上演されていません。宝塚ならではの解釈と演出で観られる日を、『リボンの騎士』ファン、心をひとつにして待ちたいものです。
※『リボンの騎士』が連載されたマンガ雑誌はいずれも講談社の出版物です。