これから雨の季節です。台風、豪雨、土砂災害などによる避難情報が多く発表されます。緊急時に避難する「安全な場所=避難場所」と、被災者が一時的に暮らすことになる「避難所」。特に体育館などの「避難所」は地域の住人向けのものと捉えられがちです。私たちが出先で災害に遭った時、観光客や買い物客・出張者など住人以外は、「避難所」に行っていいのでしょうか?
「避難場所」と「避難所」
2011年東日本大震災の頃は、災害から逃れるための「避難場所」と、避難生活を送るための「避難所」がハッキリと区別されていませんでした。また災害ごとの「避難場所」が指定されていませんでした。このため地震発生直後に避難場所に行ったものの、そこが大津波に襲われ犠牲者が出るなど、痛ましいことがありました。
この教訓から、2013年6月に災害対策基本法が改正され、「指定緊急避難場所」と「指定避難所」に関する規定が設けられました。
【指定緊急避難場所(災害ごとに違う場合も)】
津波、洪水等による危険が迫った時に、緊急に避難する際の避難先です。住人等の生命の安全確保が目的です。地震、土砂災害、津波、洪水など、災害の種類ごとに避難場所が指定されています。災害によって避難する場所が違うこともあります。注意してください。
【指定避難所(次の項目でさらに詳しく)】
その後、災害の恐れがなくなったら指定避難所に避難します。自宅が被災して帰宅できない場合、一定期間、避難生活を送るためのところです。いわゆる一般的に言われている「避難所」です。
住人以外が利用してもOK
「指定緊急避難場所・指定避難所、いずれも地元の人はもちろん観光客などの住人以外の人=ビジターも利用できます」。ためらわず避難して下さい。
特にその後しばらく暮らすことになる「指定避難所」は、地元の人だけのものと思っている人がいる場合もあります。住人以外の人が身を寄せると、食料、毛布などの支援物資が足りなくなるのではないか?そんな心配からかもしれません。
避難場所、避難所はみんなのためにあります。住人だけのものではありません。また緊急の時は人命優先、ゆずり合いです。確かに発災直後は色々足りなくなりがちです。その状況を、自分たちだけで解決しようとせず、避難所を管理する市町村・都道府県に伝えてください。
どの避難所も、整うまでに少し時間がかかりますが対応してくれます。万が一、避難所がいっぱいで、住人・ビジターが体を休めるスペースが確保できない場合、行政が探して他の避難所まで運んでくれます。
指定避難所(いわゆる避難所)について詳しく
【指定避難所】
市町村が指定した避難所のことで、一般的な「避難所」を指します。災害の危険性がなくなるまで、または災害により自宅で暮らすことが困難な人が、一時的に滞在することを目的としています。
【福祉避難所】
障がい者の方や妊産婦、乳幼児、介護が必要な高齢者など、一般の避難所では生活が困難な方(災害時要援護者)を受け入れるための避難所です。社会福祉施設など、事前に災害時における福祉避難所に関する協定を締結している施設が当てはまります。
【指定以外の避難所】
地域のコミュニティセンターや福祉センター・自主避難所など、避難所の収容人数が不足している時などに利用される避難所です。旅館やホテルも「指定以外の避難所」になります。
※能登半島地震での避難所の定義
2024年能登半島地震では、避難所について以下の定義で運用されていました。
■1次避難所 =「指定避難所」「自主避難所」「福祉避難所」のことです。
■1.5次避難所=石川県総合スポーツセンターに設けられた避難所です。2次避難所に移るまでの間、被災者が身を寄せました。
■2次避難所 =避難所として利用したホテル・旅館などです。(広域避難も含む)
※この記事は内閣府による定義に従って書いています。
インターネットで検索すると、能登半島地震のケース(石川県)だけでなく、市町村によって避難所の定義が若干違います。それぞれの定義は、運用上でその地域に合ったものとして考えられたものと思われます。ご留意ください。
家でも出先でも避難場所・避難所をチェック
平時に自宅の近くの避難所は必ずチェックしておいてください。市町村からハザードマップや、避難所マップが配布されていると思います。
自治体による「防災アプリ」でも確認することができますし、スマホアプリでも確認できます。また街中にピクトグラム等による看板(表示)が出ています。少し気を付けて歩くと、気づくはずです。チェックしてみて下さい。
もちろん、お出かけ先でも要チェックです。観光地の場合、道の駅などの施設に避難マップが掲出されています。また土地勘がない出先こそ「看板」「掲示」が役立ちます。目的地に到着したら、歩く時に気にかけてみてください。
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被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。
■五十嵐 信裕
東京都出身。1990年メ〜テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。