【医療のミカタ 医療のフシギ】#9
「7月に大災害が起こる夢を見ました」とかいう本が売れているそうです。太平洋の海水が盛り上がる、とか。
「えっ? 本当に?」とか思う人は負けずに夢を見て自分の夢で確かめましょう。「僕の夢は富士山の大噴火だったけど……」「太陽フレアでしょ。ふつうに考えて」「彗星の衝突の方が可能性高いんじゃない」などと、いろいろ意見が出てくると思います。「審判の日」の予感は、いつの日か必ず寂静を迎える我々人間のサガだと思います。
地震の専門家は「科学的で客観的な根拠のある言説を信用してください」とのご高説です。
確か東日本大震災や阪神、熊本、能登の地震でも科学的で客観的な見解が事前に示されていましたよね、たしか。あれっ、何もなかったかな?
忘れもしないのは3.11の2日前に起こった三陸沖の地震の報道です。翌日朝、とあるニュース番組でとある女性研究者がカメラの前で「言わされて」いました。
「この地震はプレートによるものではなく大地震につながるものではありません」
翌日にあの大地震が起こりました。あのとき私は都内の病院で人工弁をひたすら心臓に縫い付けていました。
地震について、科学的で客観的な見解とは「いつ起こるのか、そんなのぜんぜんわかりまへーん!」です。しかし「過去の例から、こんなことが起こるかも知れないよ」という研究の成果は意味深いと思います。これらは、いつ起こっても大丈夫なように「備える」、ということを教えてくれます。
さて、健康の話ですが、病気も「備え」が重要です。地震同様、いつ起こるのか予測は不可能ですから。しかし、なにせ病気の種類はさまざま。体のどこがやられるかわかりません。がんでも種類によって生き残れる人が多いのと、そうでないのがあります。患者さんを診ているとやはり病気の備えは情報源の確保でしょう。ネットも便利ですが、やはり大事なのはヒトです。
まずは「何でも相談できる人」。親戚の医療関係の人が頼りになるでしょうが、医者はいつも法事で偉そうにして人を見下していますから、きっと親戚中で嫌われていることでしょう。医者が親戚にいたら、やることなすことバカにされて、かえって災難かもしれません。
その点、親戚や知り合いに看護師さんがいたら「どこの病院がいいか」など客観的で信頼のできる情報が得られるでしょう。
それと皆さんは、これまでいろいろな病気についていろいろな機会で学習する機会があったはずです。そういった「自分とは関係ないや!」と思いながら得た情報は勘違いや伝えた人の偏見でゆがめられています。それはかつて「他人事」であって「自分ごと」ではなかったからです。
そう考えると同じ病気の先輩が頼りになります。私の場合、発作性の心房細動でカテーテル治療を受けたことがあります。患者さんに対しては「医者」としてではなく、同じ病気の先輩として、もっとも頼りになる情報源になっていると思います。そう思って、これまで3年間で100人ほどの後輩を「導いてきた」と思います。
(南渕明宏/昭和医科大教授)