展望!2019 消費トレンド

◎流通評論家 渡辺広明
わたなべ・ひろあき
1967年生まれ。大手コンビニチェーンに22年間勤務。店長、スーパーバイザーをへて、16年間バイヤーを経験。日用品を中心に、メーカーと約600品目の商品開発を行う。ポーラ・オルビスグループの化粧品会社pdcに2年間勤務。2014年TBCのグループ会社にチーフマーチャンダイザーとして着任。商品開発、営業、マーケティングなど幅広く担当している。

「改元」と「インバウンド需要」にビジネスチャンス

商品のはやりすたりを如実に映すコンビニエンスストア。インターネット通販商品の受け取り、ホットスナック類の販売など、サービスの進化はとどまるところを知らない。渡辺広明氏はコンビニ店員も兼ねる異色の流通評論家。長年にわたり消費の現場をつぶさに観察してきた。コンビニの裏側から見た消費トレンドとは──。

──流通評論家として活動されている傍ら、月に数回コンビニエンスストアで接客もされていると聞きました。
渡辺 もともと大手コンビニチェーンで商品開発や店舗指導、店長の仕事を20年以上務めてきました。コンビニは変化対応業の代表格といわれます。店長としてお店を切り盛りしていたのはバブル景気の時代でしたが、当時と比べて店員の仕事の幅は格段に広がっています。レジ作業や商品陳列はもちろん、チキンを揚げたり、コーヒー豆を機械に補充したり、ネットショップの配送手配もある。
 さらに消費増税時に軽減税率制度が導入されれば、飲食料品ごとに持ち帰るか、店内で飲食するか確認しないといけないし、レジ袋が有料になるという話も持ち上がっています。
 POSレジも進化し、店員が操作する画面には、複数の外国語を表示できるようになってきています。今もコンビニの店頭に立っているのは、消費の現場に関するナマの情報を仕入れたいため。POSデータを眺めるだけでは分からない、購入客の表情や服装などを知りたいのです。
──景気の実感はどうですか。
渡辺 あまり上向いている感じはしないですね。日本では国内総生産(GDP)の6割を個人消費が占めています。でもその肝心の層の支出が伸びていない。総務省統計局の発表している「家計調査」(2018年10月分)によると、2人以上世帯における消費支出は1世帯あたり29万396円でした。この金額は10年前からほぼ横ばいです。
 この間、支出のうち上昇したのが携帯電話料金などの通信費で、それ以外を無駄づかいせず支出を抑制している現状がうかがえます。コンビニではプライベートブランド(PB)商品を購入する人が増え、雑誌が売れなくなりました。
──なぜ個人消費が伸びないのでしょう。
渡辺 つまるところ、消費を左右するのは人の気持ちです。年金支給開始年齢が後ろ倒しになったり、60歳定年制が崩壊したり、将来に対する不安感が増しているから財布のひもは固いまま。70歳まで働きつづけるとなれば、健康にいっそう気を遣う必要があります。いま働き盛りの40〜50代で健康食品を購入する人が増えているのは、そうした背景があると思います。
 ただ悲観要素ばかりでなく期待感も若干あり、そのひとつが2019年に予定されている「改元」です。

外食はぜいたくか
──改元はビジネスチャンスになりうると。
渡辺 年末年始には歯ブラシやカミソリを買い替えたりして、気分を一新したくなるのと同様、元号が改まるわけですから、新年を迎えるよりも人々の気分は高揚するでしょう。
 心機一転、手帳やカレンダーを新しくしましょうとか、ふとんを買い替えましょうというように、改元をビジネストークのネタにすればよいのです。もっとも、新元号の発表は4月1日以降。前倒しで公表されていたら、グッズ制作などの関連ビジネスが盛り上がっていたと思いますが……。
──19年のもうひとつの大きなイベントが消費増税です。
渡辺 導入が予定されている軽減税率制度について、国税庁は「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」を発表していますが、一般の人が理解するのは容易ではありません。飲食料品は8%に据え置かれる一方、アルコール飲料と外食は10%に引き上げられます。
 そもそも軽減税率を導入する目的は、生活必需品を購入する際の負担を軽減するためだったはず。アルコール飲料はぜいたく品のため10%にするのは理解できますが、外食イコールぜいたくと一概にいえるでしょうか。ファストフード店やコンビニのイートインコーナーで食事するのがぜいたくとは思えません。
──外食を控えファストフード店などでテークアウトしたり、宅配を依頼する機会が増えるかもしれません。
渡辺 容器をつくったり、配達するドライバーを雇ったり、手間や人件費がかかるのにテークアウトする方が、販売価格が安くなるのは本来おかしいはずです。そして外食の線引きもわかりづらい。最近私が提唱しているのは、外食の定義を変更すること。つまり外食を「テーブルやいすのある場所で、店員が盛り付け、給仕作業をする場合」と定めれば、セルフサービス式の飲食店での食事は、外食に当てはまらないことになります。
 政府は一億総活躍社会を掲げ、女性やシニア層もいっそう活躍できる社会の実現を目指しています。家事時間の削減につながる外食は推奨するべきです。外食なら、おいしいからもう一品頼もうとか、プラスアルファの消費も期待できる。外食を促す仕組みに改める方が賢明だと思いますね。

外国人材の争奪戦も
──注目されているトレンドはありますか。
渡辺 日本では人口減少が見込まれるなか、消費、労働の現場で外国人の存在感が日増しに高まっています。もし現在の生活水準を維持したいと考えるなら、さまざまな分野で外国人の力を借りなければなりません。
 お菓子でよく売れているのが「コロロ」というグミ。フルーツのような食感で、中国でも人気があるそうです。そのほかインバウンド客にはティッシュの「鼻セレブ」や高濃度アルコール飲料も受けています。グミはドイツ生まれの堅い歯ごたえの食べ物でしたが、日本ではアレンジを加え独特の食感を付加しています。このように日本人はもともとある商品を進化させるのが得意です。
 また、環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国による「TPP11」の発効が見込まれますが、多種多様な製品で関税が撤廃されるのは追い風です。
 さらに、先日国会で成立した改正出入国管理法もポイントの一つです。4月1日の導入を目指し制度の詳細を検討するようですが、10年後には外国人材の争奪戦が起こっているかもしれません。経済成長著しい他のアジア諸国ではなく、成長率が鈍化している日本にわざわざやって来て働きたいと思うでしょうか。日本がいつまでも「選ばれる国」であると思い込むのは間違いです。
──2019年の消費動向を占うと?
渡辺 消費増税は心配要素ですが、中小小売店でのキャッシュレス決済時のポイント還元や、改元やラグビーワールドカップ、参院選などイベントが多く、景気は上向く年になると思います。翌年には東京五輪があり、大阪での万博開催も決まり、懸念されていた消費心理の冷え込みが当面先送りになりました。
 平成が終わろうとしていますが、この間の消費動向を総括すると、価値観の多様化が進んだ時代だったといえます。以前は同じブランドの商品や、似たファッションを身にまとうのが、かっこいいとされていました。今は自分らしさや個性が重んじられるご時世。
 部下の若手社員とお酒を飲みにいくとき、居酒屋チェーンに行く機会が減りました。大抵、飲食店で食事をしておなかを満たし、バーに立ち寄ったり、野毛や赤羽の〝せんべろ〟といわれる、個人経営の居酒屋に行ったりします。
 音楽業界にしても、あらゆる世代が知っている流行歌が聞かれなくなりました。一方で、アニメのナレーション役のアイドルが武道館でコンサートを行い、会場を満員にしています。
 これからはそうした価値観の多様化に加え、エシカル消費などの社会貢献意識を喚起する製品が増えていく気がします。プラスチック製ストローを廃止したり、レジ袋を有料化したりといった、脱プラスチックの動きに象徴されるように、人々の環境意識は高まっていくでしょう。
 消費者の多様な価値観への対応が求められるメーカーサイドは大変だと思います。ちなみに今日着ているTシャツは「ゾゾタウン」でオーダーしたもの。着丈や胸囲を体形に合わせてカスタマイズできるので、着心地がいいです。

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