特集は、様々な金銭トラブルが起きている宮城復興支援センターのイングリッシュキャンプについてです。全てを知るとみられる実質トップの男性はどこで何をしているのでしょうか。
5月24日。私たちは、車で千葉県内へと向かいました。千葉県内の宿泊施設で開催される宮城復興支援センターの「イングリッシュキャンプ」を取材するためです。センターでは、5月24日から一泊二日の日程でキャンプを実施すると告知し児童を募集していました。仙台から5時間ほどかけて到着したのは、県立の宿泊施設です。
記者:「通り過ぎましょうか」
募集チラシなどによると、キャンプの一行が到着するのは午前11時。それまでの間、付近で待機することにしました。
未返金に未払い…金銭トラブル次々と
一般社団法人「宮城復興支援センター」(仙台市)のイングリッシュキャンプは、小学生と外国人留学生が交流を楽しむ宿泊型のイベントです。SNS上で「返金がない」「連絡がとれない」といった声が相次ぐようになり、私たちは4月から取材を始めました。
被害を訴える小学生の保護者:
「子どもの積極的な交流したい気持ちを踏みにじられたという言葉が正しいか分からないが…怒りの気持ちです」
この小学生の保護者は去年、今年3月開催のキャンプに申し込み3万円を振り込みました。案内資料は、開催日の1週間前に送られてくるということでしたが何も届かず、前日になって担当者から電話が入り中止を告げられたといいます。理由は「参加者が最少人数に満たない」ということでした。担当者は1週間以内に返金手続きの書類を送ると約束したものの何も届かず、その後は電話にも出なくなってしまいました。返金がないことはもちろん、対応の悪さにも憤りを感じています。
被害訴える小学生の保護者:
「中止になったにも関わらず返ってこない。我々としては素直に詐欺だと思っている。前日に中止の連絡をしてくることや書類を送ると約束したのに送らないなど詐欺ではないとしても対応の仕方は信じがたい」
また、キャンプでは全国各地の青少年自然の家に宿泊すると告知していたため、施設への取材も進めました。すると明らかになったのが利用料の未納です。施設を運営する国立青少年振興機構の担当者は「各地の施設で昨年度の利用料が未納になっている。詳しくは明かせないが相当な額に上る」と説明。支払い計画書を作成してもらったもののそれも守られず、今年度は宮城復興支援センターの予約を受けないよう各施設に通知したと説明しました。5月に入り、この問題を報じるとさっそく翌日、関東のバス会社から私たちのもとに電話が入りました。「施設だけでなくバス会社への未払いも起きている」というのです。
被害を訴えるバス会社:
「1月のキャンプでバスを運行しましたが、その費用を払ってもらえません。担当者からは勝手に支払い確認書のファックスが送られてきて、分割で払いたいと一方的に提案がありました。何回かに分けて5万円ずつ払うという話でしたが、その期日が来ても払ってもらえませんでした」
バスの運行費用は40万円でしたが、結局支払いがあったのは1万6000円だけでした。このバス会社によりますと、同じようなトラブルは全国のバス会社から聞こえていて、中には180万円の未払いに悩んでいるバス会社もあるといいます。
その後も、キャンプに申し込んだという保護者や宮城復興支援センターのスタッフだったという人からも連絡が入り、キャンプ運営の実態が少しずつわかるようになってきました。そもそも未返金や未払いを繰り返す「宮城復興支援センター」とはどのような団体なのでしょうか。
設立当初は「支援物資の配布」
ホームページによりますと、一般社団法人の「宮城復興支援センター」は、東日本大震災が発生した3日後、2011年3月14日に設立されています。震災直後は、全国から送られてきた支援物資を被災地に届ける活動をしていました。その後、2012年頃からイングリッシュキャンプを始めたと見られます。
「なぜ復興支援団体が英語のキャンプを実施するのか」素朴な疑問が湧きますが、tbcが入手した資料によると、もともとは被災した子ども達の心のケアを目的にキャンプを始めたといいます。その後は「全国への支援の御礼」「世界は広いと知ってもらう」「防災の話をして風化防止につなげる」ことなどを理由に全国の小学生を対象に各地でキャンプイベントを企画してきました。おととし=2023年までは目立ったトラブルはなく、保護者によりますと、参加した子どもたちもイベントを楽しみ、リピーターも多かったといいます。
子どもがキャンプに参加した保護者:
「当日、同じグループになった人に目標を発表するとか、いろんな国の人たちとの交流もありプログラムや内容は良かったと思う」
しかし、昨年度から前述したような未払いや未返金を繰り返し、金銭トラブルが表面化するようになりました。いったい何があったのでしょうか。
元スタッフが語る「自転車操業」
宮城復興支援センターが運営するイングリッシュキャンプについて、私たちは情報公開請求で収支計画書を入手しました。それによりますと、1泊2日のキャンプで1回あたり児童100人の参加を募り予算はおよそ280万円です。チラシやホームページでは、去年12月から今年9月までに全国20の自治体で50回以上キャンプを開催するとし参加者を集めています。
単純に足し上げただけでも収支は1億5000万円前後に上る計算。さらに、2月7日8日には、千葉県と茨城県で同時にキャンプを開催すると計画していて、運営には多くの人手が必要になると予想されます。しかし、元スタッフの証言で新たな事実が浮かび上がりました。
宮城復興支援センターの元スタッフ:
「キャンプの業務を担っていた社員3人は、今年2月上旬までに退職しています。給与が期日通りに払われないうえ、資金繰りも厳しく危ないというのが理由です。そこから業務がまわらなくなりましたが、ホームページ上では募集を続けていました」
宮城復興支援センターの元スタッフ:
「キャンプ事業はもともと、数か月先の入金をあてにした自転車操業でした。冬季はキャンプの開催が少なくなるので秋には資金繰りが悪化しがちでした。資金が底をついたということではないでしょうか。支払いの遅延や業者からの督促、クレームは日常茶飯事でした」
元スタッフの証言によると、入金をあてにして児童の募集を続けていた恐れがあるというのです。また、「去年、台風の影響でキャンプがいくつか中止になっている。その頃からおかしくなったのではないか」と指摘する保護者もいます。キャンプが中止となったために業者への支払いに加え保護者への返金も重なり、立ち行かなくなったということは十分考えられます。全ての事情を知ると見られるのが実質トップの男性です。
実質トップの男性は“音信不通”
仙台市青葉区のビルの一室には、イングリッシュキャンプを運営する「宮城復興支援センター」キャンプを企画する旅行会社「ハローワールド」それに「こども応援団」という3つの組織が入居していました。このうち「こども応援団」は去年、破産の手続きが始まり、さらに今年2月には、新型コロナの助成金2億円余りの不正受給も発覚しています。この3つの組織の実質的トップはどれも同じ男性が1人で務めています。自宅とされる場所を訪ねても応答がなく、音信不通の状態となっています。
ただ、給与の支払いを求める元スタッフのもとには、通信アプリでメッセージが届いていました。
実質トップの男性からのメッセージ:
「ご迷惑をおかけしており申し訳ございません。別会社からの支払いをすることになるので、あと2,3か月はお待ちいただくことになると思います」
5月24日に行われる予定だという千葉県内でのイングリッシュキャンプ。私たちは現地に取材に向かいましたが、スタート予定の午前11時になっても人影はありません。
中村洋輝記者:
「時刻は午後0時14分です。予定だと屋外で昼食をとる時間ですが、建物を出入りする人の姿は見当たりません
結局、5月24日から1泊2日で行われる予定だったイングリッシュキャンプは、直前になってキャンセルされたとみられることがわかりました。実質トップの男性に、返金を求める保護者の訴えは届いているのでしょうか。
被害訴える小学生の保護者:
「とにかく早くまずは返金してほしいという思いがある」
そして、今回のキャンプを巡っては、募集のチラシが小学校で配られていたことにも疑問の声が上がっています。保護者からは「学校のフィルターを通しているので安心だと思った」との声も聞かれます。また、宮城県教育委員会は去年秋頃にはすでに返金トラブルの相談を把握していたものの具体的な対応はとっていなかったということです。担当職員は「当時はトラブルの確証が得られなかった。返金されるかもしれなかった。対応が遅かったという指摘は真摯に受け止めている」と説明しています。