7月25日、中日ドラゴンズ球団初のOB戦「DRAGONS CLASSIC LEGEND GAME 2024」がバンテリンドームナゴヤで行われた。
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ファン目線で言えば、「やっと、ついに、開催された」という思いだ。近年では19年にヤクルト、今春に西武が実施。いずれも大盛況のうちに終わっており、いよいよ自分たちの番がやってきた喜びでいっぱいだったのだ。
■“緊張と緩和”、そして“ガチ感”
OB戦の何が楽しみか。ズバリ“緊張と緩和”、そして“ガチ感”である。
前者は往年の名選手が思うように身体を動かせないのを目の当たりにし、現役時代とは異なる姿に力がフッと抜けるような状況。後者は現役時代さながらのパフォーマンスや、投打の一騎打ちに唸ること。こちらは7月22日に行われた「日韓ドリームプレーヤーズゲーム」で感じたことでもある。
では、今回の中日OB戦はどうだったか。しっかり「緊張と緩和」を体感できたし、「ガチ感」も随所に感じられた。
「緊張と緩和」でいうと、初回の小松辰雄氏と中尾孝義氏の1982年優勝バッテリーはオールドファンの力が入るには十分すぎる演出だが、投球練習で何度もボールを逸らすなどグダグダなスタート。のっけから3失点を喫する形となった(なお、小松氏はスパイクを履けておらず、硬いマウンドに合わなかった旨を降板後に明かしている)。 また、三塁を守った宇野勝氏は横っ跳びでの好捕や逆シングル捕球で魅せるも、いずれもスローイングまでは身体がついていかず。場内も「おおっ」となった後に「あ〜」と、ため息混じりの笑いと拍手に包まれていた。
一方、最も「ガチ感」を感じられたのは英智氏である。現役時代さながらのスライディングキャッチやレーザービームを見せつけ、打席でも中押し点となる2点タイムリー三塁打を記録。見事、最優秀選手に輝いた(独特な言葉を紡ぐヒーローインタビューも現役時代のままであった)。
究極の「緊張と緩和」かつ「ガチ感」は最終7回に訪れた。2点リードの強竜チームは岩瀬仁紀氏がマウンドへ。対する昇竜チームの先頭打者は小笠原道大氏。通算407セーブを挙げたプロ野球史上屈指のクローザーと、強烈なフルスウィングで通算2120安打&378本塁打を記録したスラッガーの一騎打ち。これを堪能しようとした矢先、アイスキャンデーを頬張る田尾安志氏と福留孝介氏がビジョンに大写しに。
最高峰の対決を見守ろうと球場中が固唾を呑む中、2人のあまりのリラックスした姿に爆笑の嵐。それでもこの後、難しいピッチャーゴロをさばいた岩瀬氏のフィールディングは現役時代さながらであった。■過去から現在、未来への継承
初のOB戦とあってか、この日のバンテリンドーム周辺は早くからドラゴンズグッズを身につけるファンが多く訪れていた。
ドームに隣接する商業施設では午前中からユニフォーム姿の人を何人も見かけ、自由席の入場列は昼過ぎの時点で隣のゲートまで伸びて折り返すほど。20年ほど前までは当たり前のように見られていた席取りのためのシート貼りも、2024年の今見ると随分新鮮に感じられた。
ファンが各々着るユニフォームも普段の公式戦よりバラエティ豊か。やはりOB戦だったせいか、現行のものよりは何世代か前が多い印象だ。例えば荒木雅博氏は引退時(18年)のユニフォームを着ている人が多く見えたし、川上憲伸氏ならいわゆる黄金期(2004〜11年)のモデルを着ている人が多数見られた。
今回のOB戦の大きなテーマとして「過去から現在、未来への継承」が挙げられると思う。試合前にコンコースを回ると、今中慎二氏のユニフォームを着る父親と髙橋宏斗ユニ姿の子どもが連れ立って歩いていた。かつてのエースと現代のエースが“交わる”状況に胸が熱くなった。
親子三世代で観戦に来たという名古屋市在住の30代男性はこう話す。
「この日を楽しみにしていました。娘は今日が“バンテリンデビュー”で、英才教育を施そうかなと(笑)。現状のペナントレースは苦しい状況ですが、だからこそOBの皆さんには今回の試合を通じて喝を入れてほしいと思っているし、強かった頃に思いを馳せてしまいますね」
中日球団は今年で創設88年の名門。2000年代まではAクラスの常連だったが、ここ10年ほどは低迷期を抜け出せずにいる。ファンにとっては歯痒い状況が続くが、それはOBにとっても同じだ。
昇竜チームの監督を務めた権藤博氏は「今のドラゴンズは弱いですから、何とかしてやってください」と訴え、総監督の法元英明氏も「下剋上を果たしてほしいと願っています」と思いを共有する。
現在のユニフォームを着る監督・コーチならびに選手の登場がなかった(映像も含めて)のは残念だった一方、純粋にOBの振る舞いに集中できたのは良かったのかもしれない。彼らの力強い言葉に気持ちを新たにしたファンも多かったのではないか。少なくとも場内は万雷の拍手が起こっていた。
OB会長の小松氏は締めの言葉で第2回以降の開催、そして今回未招集の選手を呼ぶことを示唆。具体的にはケン・モッカ氏やタイロン・ウッズ氏など、外国人選手の名前が多く挙がっていた。まず1回実現できたのだから、ここからは各方面のやる気次第。毎年とは言わないが、ぜひ数年に一度の開催や他球団OBとの対抗戦を望みたい。
【著者プロフィール】
かが・いっき。1988年3月6日、愛知県生まれ。成蹊大学卒業後、一般企業を経て独立。ライティング、MCなど幅広く活動する。2016年〜23年まで『スポーツナビ』にて編集・編成を担当。在職中に五輪・パラリンピックへの派遣、『Number』『文春オンライン』等への寄稿を経験。趣味は草野球で、1週間で20イニング投げることも。【関連記事】「しっかり元気になりたい」中日・ドアラが今週末のロッテ戦も“出演見送り”との球団発表にファン騒然「もしかして誕生から“中の人”変わってないの?」【関連記事】中野、宗、長岡のゴールデン・グラブ受賞3人がいずれも新型指標UZRで大幅低迷。“守備の名手”に何が起きているのか<SLUGGER>
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THE DIGEST 2024年07月26日 11時32分