【特集】花粉症と意外な関係も?増加する『大人の食物アレルギー』治療薬の開発現場のいま

 「食べ物を食べると喉がかゆくなる」…大人になってから発症する「大人の食物アレルギー」の患者は増加傾向にあります。その症状は、皮膚症状から呼吸困難などの呼吸器症状までさまざまです。そしてその原因も多岐にわたります。「ニュース ジグザグ」は、“国民病”とも言われる花粉症との意外な関係に注目。そして、アレルギー治療薬の開発の現場も取材しました。(「サタデーLIVE ニュース ジグザグ」取材)

■3年間で約1.5倍に…「大人の食物アレルギー」検査の現場

小澤あゆみさん

 関西医科大学附属病院にあるアレルギーセンター。この日受診した小澤あゆみさんは、ある日突然、症状が出たといいます。

(小澤あゆみさん)

「去年の秋、昼ご飯の後、1〜2時間したら目がかゆくなり、息苦しくなってきて、喉が塞がるような狭窄感が出て、救急車で運ばれました」

検査のため用意された食品

 小澤さんは、搬送された病院からのすすめで、食物アレルギーの検査を受けました。アレルギーを起こす食品は何かー。プリックテストと呼ばれる検査を行いました。以前は大丈夫だったのに、カレーや生の魚介類を食べた時、気分が悪くなることがあったそうです。

 そこで用意した食品は、「クミン」や「コリアンダー」などの香辛料に、「ホタテ」や「牡蠣」「タコ」など16種類。プリックテストでは、これらの水溶液を皮膚に一滴落とし、反応を見ていきます。もし、その食品にアレルギー反応があれば、赤くなります。

プリックテストの様子

 検査から15分後―。

(関西医科大学附属病院 アレルギーセンター 小林良樹センター長)

「結果なんですが、牡蠣…。カニ。あと貝類に気を付けてもらって…」

プリックテストの結果

 小澤さんは、カニ・タコ・牡蠣やあさりなど、特に生のものにアレルギーを起こすことが分かりました。

(小澤あゆみさん)

「これには注意したほうがよいとか、こういう食べ方をしたほうがよいとかが分かったので安心しました」

小林良樹センター長

(小林センター長)

「大人の食物アレルギーは増えてきています。小児でよくあるアレルギーは、牛乳・鶏卵・小麦などですが、大人の場合、多いのは果物・野菜・ナッツ類です」

 まだまだ本格的な調査が行われていないという「大人の食物アレルギー」。消費者庁が1000人を超えるアレルギー専門医に協力を求めて行った調査によると、食物アレルギーだと考えられる症状が出て医療機関を受診した18歳以上の人は、2017年の230人から2020年には338人と、3年間で約1.5倍に増加しています。

■「サタデーLIVE ニュース ジグザグ」の足立キャスターも…

足立夏保キャスター

(足立夏保キャスター)

「私も大学生のころから、桃やリンゴなどを食べると唇が腫れたり、喉がかゆくなったりする症状が出るようになりました。この症状がアレルギーなのかどうか、こちらのクリニックで検査していただきたいと思います」

検査を受ける足立キャスター

 足立キャスターは、モモやリンゴなどの果物も含め、アレルギーの原因を調べられる血液検査を受けました。

今井康友院長

 9日後。再びクリニックを訪れた足立キャスター。検査の結果は―。

(野田阪神駅前いまい皮フ科 小児皮フ科アレルギー科 今井康友院長)

「リンゴの血液検査の結果が陽性で帰って来たので、リンゴの口腔アレルギー、リンゴを食べたら口がかゆくなる症状があるんです」

(足立キャスター)

「今後、絶対に食べられないのでしょうか?」

(今井院長)

「食べないほうが症状は悪化しにくいと思います。(足立キャスターの場合は)アップルパイにすれば、安心して食べられると思います」

(足立キャスター)

「過熱をすれば、抗原が…」

(今井院長)

「壊れます。リンゴ・モモに関しては、結構壊れやすい(熱に弱い)抗原なので」

足立キャスターの検査結果

 一方で、モモに対しては、アレルギーが発症しない陰性でした。しかし、気になる検査結果が―。

(今井院長)

「今回、シラカンバが陽性になっています。シラカンバは、寒い所に生息する木の花粉です。花粉のせいで大人の食物アレルギーが出てくることがよくあります」

 花粉アレルギーが元となり、食物アレルギーを発症する?その関係は―。

■花粉症と「大人の食物アレルギー」の関係とは

福冨友馬室長

 20年近く大人の食物アレルギー患者の診療を続けてきた、国立病院機構相模原病院・アレルゲン研究室の福冨室長に、花粉症とアレルギーの関係について話を聞きました。

「マスト細胞」が「食べ物のアレルゲン」を感知

(国立病院機構相模原病院・アレルゲン研究室 福冨友馬室長)

「花粉のアレルゲンと食べ物のアレルゲンのカタチが似ていることがあります。ですから、花粉症の人が食べ物を食べた時に、体としては、『花粉が入って来た』と間違ってアレルギー反応を起こしてしまう。これを交差反応といいます」

アレルゲンがIgE抗体につっつく

 まず、花粉症のメカニズムについて説明します。皮膚や鼻、気管支などの粘膜に存在する「マスト細胞」は、「花粉のアレルゲン」が体内に侵入したことを感知すると、センサーの役割を果たすIgE(アイ・ジーイー)抗体とくっつき、「花粉のアレルゲン」を捕まえることで活性化。ヒスタミンなどの物質を放出することで花粉症の症状が出ます。

食物アレルギーを引き起こす

 一方で「交差反応」は、「マスト細胞」が「花粉のアレルゲン」と似ている「食べ物のアレルゲン」を“間違って”捕まえてしまうもので、これによって「食物アレルギー」が起きてしまうのです。

アレルギーの原因となる花粉と果物・野菜との関係

 「交差反応」をめぐっては、スギやヒノキの花粉症患者は、トマトに反応してしまう可能性が。ヨモギやブタクサの花粉症患者は、にんじんやメロンなどに反応してしまう可能性があるといいます。

読売テレビニュース

(足立キャスター)

「『大人の食物アレルギー』になった場合、改善する方法はあるのでしょうか?」

(福冨室長)

「証拠(エビデンス)のある改善方法はないです。日常生活で注意しないといけないのは、疲れや偏食で栄養状態が悪くなるとか、多量の飲酒でアレルギー症状が強く出る人が多いので、気を付けたほうがよいです」

■アレルギー疾患を抑える新薬「MOD000001」とは?

中村勇規准教授

 日本人の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を持ついま、求められるのは新たな薬です。

(足立キャスター)

「こちらの研究室では花粉症だけでなく、食物アレルギーや喘息にも効果のある新薬の開発が進められています」

読売テレビニュース

 新薬の開発者の一人、山梨大学の中村勇規准教授。アレルギーの症状を抑えるために着目したのが―。

(山梨大学大学院総合研究部医学域 中村勇規准教授)

「(顕微鏡で覗くと)真ん中に1つ、透明に色が抜けた核が一つ見えて、その周りに青いつつぶが見えます。これがマスト細胞」

 「交差反応」のメカニズム説明で登場した「マスト細胞」です。これまでの市販薬は、「マスト細胞」が放出するヒスタミンなどを抑えようとするものでした。一方、開発されている新薬は、「マスト細胞」そのものを減らしてしまう、というものです。新薬の名は「MOD000001」。「マスト細胞」の活動を抑える作用を持つ化合物です。

 開発に至った経緯は―。

(中村准教授)

「もともと抗がん剤として使われたもので、そのターゲットが『マスト細胞』の生存を左右するものだったというところから、我々はもともとアレルギーの研究をしていましたので、これをアレルギー治療に置き換えて、『マスト細胞』を減らすことができるんじゃないかということで今回の研究に至りました」

読売テレビニュース

 スーパーコンピューターの1億回にも及ぶシミュレーションから見つかった、この新薬。

マウスの皮膚の顕微鏡写真

 写真は、マウスの皮膚の顕微鏡写真で、「マスト細胞」の数を計測しているデータです。写真の上部のギザギザの部分が毛で、下の部分が筋肉。その中央で青くなっている斑点が「マスト細胞」です。

薬を飲んでいないマウスと飲んだマウスの比較

 「MOD000001」を飲んだマウスの皮膚から、「マスト細胞」が減少していることが分かります。人から採取した「マスト細胞」でも、同様の結果がみられたといいます。

(足立キャスター)

「私たちの手元に、この薬が届くのは、いつごろになるのでしょうか?」

(中村准教授)

「現状は臨床試験がまだ行われていない状態ですので、早くて5年、長く見て10年ほどで届けられるかと思います」

読売テレビニュース

※読売テレビ「サタデーLIVE ニュース ジグザグ」 ≪特集コーナー「一滴」≫

大海に一滴を垂らすように、世の中が少しでも良くなればという思いで、番組スタッフが独自の取材・提言を行うコーナーです。

(2025年4月5日放送分を一部加筆・編集)

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