グラフデータベースソリューションを手掛ける「Ultipa(北京同心尚科技発展)」がシリーズAで2100万ドル(約23億円)を調達したことがわかった。某政府系ファンドがリード・インベスターを務め、エンジェルラウンドで出資した招銀国際(CMB International Securities)がコ・インベスターを務めた。今回調達した資金は販売およびソリューションチームの構築や市場拡大などに充てられる。

Ultipaは2019年に設立された。同社のコアメンバーはマイクロソフトやヒューレット・パッカード(HP)、米ストレージ機器開発企業「EMC」(現Dell EMC)、アリババなど世界的な大企業出身だ。創業者の孫宇熙CEOはシリアルアントプレナーであると同時に、高性能システムとビッグデータ、クラウドコンピューティングの専門家として、シリコンバレーと北京の多国籍企業やスタートアップ企業で20年余りの経験を積んでいる。社員もそれぞれ清華大学やハーバード大学など世界的に有名な大学出身で、一流の技術と広い視野を持つ。

孫CEOは、かつてシリコンバレーで高性能システムの構築とビッグデータに関する仕事をしていた際、40年以上使われてきたリレーショナルデータベースでは、膨大なデータが同時発生するストレージ、読み取り、処理、分析などに対応できなくなっていることに気付いた。ビッグデータを処理するのに利用されていたHadoopは性能が不十分だった。その後開発されたSparkも、金融関連で使用するにはデータのスループットや処理能力が低かった。その上、世界的に見てもオープンソースのグラフデータベースは少なく、高性能ソリューションも不足していた。

孫CEOは「グラフデータベースは今後10年で従来のデータベースに取って代わるだろう」と述べている。

同社の製品ラインは「Ultipa Server」「Ultipa Tool」「Ultipa SDK」「Ultipa Manager」で構成されている。バランスシートや資産管理、企業GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)、サプライチェーン・ファイナンスなど多くの場面で利用されている。

グラフデータベースがビッグデータの処理をスピードアップする

Ultipaは昨年から収益化に取り組んでいる。同社がまずサービス対象としたのは銀行や証券会社、保険会社、取引所などの金融関連企業だった。「平安銀行( Ping An Bank)」と「招商銀行(CMB)」は2019年、相次いでUltipa製品のテストを開始し、同社との契約を締結している。現時点で、20数社の業界トップ企業が同社のサービスを利用している。Ultipaが提供するのはSaaS化したアレンジモデルで、顧客企業のニーズに応じたアレンジにも対応しており、フレキシブルな料金体系となっている。

グラフデータベースは今年、多くの投資機関がとくに注目する分野となっている。アリババ系フィンテック企業「アント・グループ(螞蟻集団)」のGeaBase、ウイルス対策ソフトなどを開発する「百度安全」の HugeGraph、「テンセントクラウド(騰訊雲)」の TGDB(Tencent GraphDatabase)、「バイトダンス(字節跳動)」のByteGraphなど大企業の製品はもちろんのこと、多くのベンチャー企業もグラフデータベースの研究開発と応用に注力している。業界で初めてラベルという概念を導入したNeo4j、テンセント傘下の投資部門「騰訊産業生態投資(Tencent Eco-industrial Investment)」が投資を主導した「創隣科技(CREATE LINK)」によるGalaxybase、1億7000万ドル(約187億円)を超える資金を調達した「TigerGraph」、ワンストップ式ビッグデータプラットフォームを手掛ける「星環科技(Transwarp)」の StellarDBなどだ。

グラフデータベースは大量のデータと多次元の処理などを必要とする場面に焦点を当てているため、金融や電子商取引(EC)、ソーシャルネットワークなどの分野で比較的多く利用されている。米調査会社「ガートナー(Gartner)」によると、グラフデータベース市場は、2022年には控えめに見積もっても80億ドル(約8800億円)規模に成長する見込みだという。

現在、Ultipaは中国国内に40人、海外に10人の社員を擁しており、その大部分が研究開発に携わっている。孫CEOによると、昨年は大半の時間をプロジェクトのPoC(実証実験)に費やしたが、今年は受注が集中しているという。同社は今年、20〜30社との契約達成と売上高1000万ドル(約11億円)を見込んでいる。

(翻訳・山口幸子)